8月5日(日)

※所属は省略しています

第1室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①今井裕之・松井かおり

中学校英語授業における熟練教師の思考と実践の展開過程-英語使用者としての自立を促す教材活用に焦点をあてて-

本研究では,独自開発のカリキュラムを実践する熟練教師の授業を分析し,生徒が英語使用者として自立する過程を明らかにする。独自開発教材の配列,授業中の教材活用方法,生徒の発話,教師へのインタビューを多層的に分析し,3年間の指導で,生徒の発話がrecitation的なものから,発話者の意味を帯びた発話へと変化し,他者の言葉を取り込んだ重層的な発話に至る過程を明らかにすると共に,自立を支援する教師の,言語に対する深い洞察と,生徒をコミュニケーションに向かわせる授業ディスコースの豊かな工夫を考察する。

②松井かおり・今井裕之

英語授業における熟練教師の思考と実践の展開過程-ALTと日本人英語教師の関係性に焦点をあてて-

本研究は,熟練教師とteam teaching(以下TT)を行うALTの授業を分析し,熟練教師との関係性の変化を考察する。ALTの着任間もない授業と1年後の授業における振る舞いの比較,ALT・熟練教師双方へのインタビュー,ALTの授業外での生徒との関わり方の観察を合わせて分析し,このALTが,熟練教師との実践を通してその実践思考様式を再構成していく過程を明らかにする。また,両者の関係性の変化により,ふたりのTTが先行研究で分析されたTT形態とは異なるものになったことについて考察する。

③木村裕三

英語教師の動機づけ:質的データによる北京市、韓国仁川市小学校英語実践の読み取り

本研究は英語教師の動機の構成について、教科書等の具体的事象に加え、英語教師の授業観、英語教育観といった抽象的概念をも抽出しつつ、文化社会的アプローチを援用しながら教師の英語教育への動機づけの可視化を試みた研究である。対象事例は韓国仁川(2004年9月)と中国北京(2005年3月)の小学校における英語授業で、全場面を文字化し、特徴的と判断した点について、数ヶ月後それぞれの教師に半増加構造化面接を実施した。その結果を全て文字化し、授業と面接の言語データから2人の教師の英語教育に関する動機づけの可視化を試みた。

④山森直人

英語科教員養成における教室英語の指導に関する基礎的研究

英語授業における教師の教室英語使用を量的・質的に向上させるための教員養成・研修プログラムの開発を目指す研究の一環である。特に本調査では,英語授業における英語使用の特徴に関する気づきをもとに教室英語使用に関する指導への示唆を得ること目的としている。

⑤指宿和代

小学校英語活動・学校というコミュニティーを活かすには

本発表は、院生である発表者がALTとして公立小学校で行った、学校を1つのコミュニティーとしてとらえた参加型授業の実践報告である。2004年度に、神戸市外国語大学で小学校・中高教員のための大学院リカレントプログラムがスタートした。その児童英語コースでの学びを実践する場として与えられた、明石市・神戸市の公立小学校で、英語活動の時間はAuthenticityを追求する場であることを発見した。そこでどんな発見があったのか、また、小学校では比較的注目されることの少ない「書くこと」についても実践報告する。

⑥東野裕子

プロジェクト型英語活動における文字学習

与えられた,あるいは,見つけた課題(タスク)の解決に向けてのプロセスを重視する英語活動を「プロジェクト型英語活動」と定義する。本発表では,プロジェクト型英語活動における文字学習の内容とその位置づけを明らかにする。小学校では、積極的に文字指導はされない場合が多いが,英語活動の際に,国語科でのローマ字学習以降,アルファベットや単語のスペリングに対する児童の興味・関心は高まってくる。この機会を捉えて,プロジェクト型による高学年児童を対象に行う文字学習の在り方を実践を通して具体的に提案する。

第2室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①吉田晴世・西澤弘喜・牧田 快・本田勝久

プロジェクト型学習にシャドーイングを組み込むことの有効性について

プロジェクトを基にした探究活動の過程に学習者間の相互作用を組み込んだ協同的な学習方法、と定義されるプロジェクト型学習に、その教材としてリスニング活動であるシャドーイングを組み込むことによって、シャドーイングの効果のひとつとして挙げられる記憶力の保持について考察する。今回は、Intel(R) Teachが提供するプロジェクト型学習プログラムを利用し、通常のシャドーイング指導によるものと比較して、語彙およびコロケーションがどの程度記憶されるかを、間欠法による再生テストにより検証を行った

②宮城 健

リズムを利用した長文音読指導の効果

本研究では、今年4、5月に高校3年生(計125名)の5クラスを対象に、異なる3種類の音読指導を実践。①リズム音読(ラップ音読)②シャドーイング音読③一文ごとのモデルリーディングの後にリピートする音読である。それをリスニングテストの結果から考察し、またリズム、ストレス、イントネーションの面から音読力への影響を検証するものである。音読用としてリーディング教材を使用し、特にリズムに合わせて長文を読むリズム音読(ラップ音読)が、どれ程の音読効果をもたらすことができるのかを調査することを目的とする。

③川井一枝

日本人成人英語指導におけるチャンツ-技能面と情意面からの考察

チャンツは子どもの英語指導においてよく使用され、超分節的音素面に基づく「英語らしさ」の習得の他、情意面においても様々な効果が述べられている。しかし実証的研究は少なく、成人英語指導ではあまり使用されていない。本研究では、英語既習済みかつ発音もほぼ固定している成人を対象にチャンツを使用した英語指導を行い、指導前後のリスニング能力と発音の変化、Big Fiveモデルに基づく性格検査、アンケート結果、観察記録等を基に成人英語指導におけるチャンツの役割を探り、どのように使用すれば効果的であるかを考察した。

④片桐徳昭・河合 剛

Students react confidently to consistent oral classroom commands using controlled vocabulary

Establishing and maintaining a positive cycle of spoken language production that embraces the incremental expansion of further language use is possible through consistent oral commands.   Controlled vocabulary (a closed set of words known to students) realizes classes conducted almost wholly in the target language.  We instruct as follows: (1) choose commands within the controlled vocabulary, (2) saturate classes with such commands, (3) transition students’ knowledge of discrete written language to continuous spoken language by explaining phonological features such as assimilation and reduction, and (4) once the students start reacting in unison, add more commands.    Since April 2007, we have been videotaping public high school freshmen responding to oral English commands. Longitudinal analysis of the same group of students shows a gradual increase in desired behavior. When a suitable percentage of students respond immediately to commands such as ""Open your textbook"" or ""Look it up in the dictionary"", we add new commands.   Our talk will include the rationale and examples of our oral commands, video clips of students learning to react to commands, and how we plan to teach English through English.    A list of our commands in Microsoft Excel format will be emailed to members of the audience upon request."

⑤吉田 努・歌代崇史・河合 靖・河合 剛

Speaking parts in graphically-represented contexts facilitates oral expressibility

Comic voice-overs facilitate oral expressibility. Grasping the situation through pictures allows spoken language learning to commence immediately, and helps avoid monotonic readings. Acting (as opposed to being themselves) frees learners to explore speaking styles and techniques that they may otherwise shy away from.    Graphical representations directly convey context such as the story’s genre and setting, and the characters’ social relationships and emotional states. Diving into lessons without lengthy written explanations increases oral practice. Playing parts emboldens learners to talk enthusiastically with emotion involving exaggerated intonation and varying speech rates.                 We are comparing university students reading aloud comics vs text-only scripts in their native vs target languages. Learners speak better with comics in both languages. Spoken language performance is enhanced by graphics. Furthermore, once learners experience comic voice-overs, reading text-only scripts may become easier, and also training in native language eases reading aloud in target languages. In order to minimize the burden of contextual interpretation, we use comics depicting native culture situations. This unambiguously identifies the communicative intent the learners need to express verbally. We do not know whether learners would confidently enjoy target culture material.                     In our talk, we will report on experiment results including learner recordings and survey responses.

⑥三浦隆行

黙読・音読の内容理解の差の研究-脳機能イメージングによる初期研究-Study 1

本研究は74名の大学生を対象とし、①音読の内容理解は同一レベルのテキストを読む際に、被験者の記憶容量に拘わらず黙読よりも勝る、②被験者の記憶容量の上下に拘わらず内容理解はテキストレベルが上がっても音読が優位であるか、の検証を目的とした。被験者はRST (ESL)により記憶容量の上下に分けられ、黙読・音読でそれぞれレベルの異なる3つのテキスト、計6テキストを黙読、音読の順で読んでもらい、内容理解問題を解いた。今研究は、光トポグラフィを用いて音読・黙読の脳内処理を観察した補助研究に対する主要研究である。

第3室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①周 歌陽

The influence of cause variation on disagreement strategy by Chinese and Japanese EFL learners

This study examines the different disagreement strategies revealed by Chinese and Japanese EFL learners. It aims to find out how internal and external causes for disagreement influence the way the speakers disagree with their interlocutors, focusing on the preferred semantic formulars and the preferred sequence of those formulars by each EFL learner group.

②望月正道

語彙構成のテストLOTの妥当性検証

語彙の広さと深さのアプローチに対して,語彙サイズと構成のアプローチが提唱されている(Meara & Wolter, 2004). 望月(2006)は,語彙構成を測定するテストとしてLOTを提唱し,それが英語母語話者と学習者を弁別するものであることを報告している.しかしながら,LOTが語彙構成を測定するテストとして妥当性をもつものであるかの検証はなされていない.本研究では,コロケーション訳とWord Associates Test (Read, 1993;1998)という2つのテストを用いて,LOTの併存的妥当性を検証する.

③柳瀬 学

日本人英語学習者がパブリック・スピーチで使用するレトリックの特徴

スピーチコンテストで入賞するには2つの力が必要だとされている。1つは説得力のあるスピーチ原稿を作成する力。言い換えると、英文構成力・文章力…といったVerbal的側面。もう1つは伝達力、すなわち、目線・声の抑揚…といったNon-Verbal的側面である。今回の発表では前者のVerbal的側面に焦点を絞り、各発達段階でのスピーチに、レトリック表現をどのように織り込むことが可能かをスピーチコンテスト入賞者の原稿を分析しながら考察する。

④伊達正起

学習者の英語運用に対するリハーサル効果に影響を及ぼす要因

本発表では、学習者の英語運用に影響を及ぼす要素の1つであるリハーサルに焦点をあてる。そして、モノローグタスクにおいて、どのような要因が英語運用に対するこのリハーサルの効果に影響を与えるのかについて述べる。ここで扱う要因とは、次の6つである:(1)リハーサル(なし又はあり)・(2)トピック(新しい又は同じ)・(3)リハーサル時間(短い又は長い)・リハーサルタイプ(スピーキング又はライティング)・(5)練習回数(少ない又は多い)・(6)リハーサル直後のセルフモニタリング(なし又は有り)。

⑤ムジト・伊東治己

A Search for Factors Determining Global Intelligibility of EFL Learners' Oral Communication

The increase of oral communication across cultures has been promoting the status of English as a global language, necessitating the revision of the goals of teaching English for ESL/EFL learners. In pronunciation teaching, the goal should be to help learners to attain global intelligibility (GI) which ensures successful oral communication not only between native speakers and non-native speakers (NS-NNS) but also between non-native speakers (NNS-NNS). Assuming that GI should be the target of pronunciation teaching, the study attempts to explore factors which determine global intelligibility for EFL learners through the analysis of native English speakers’ and ESL speakers’ assessment of EFL learners’ utterances. For this purpose, three types of instrument will be used: (1) assessment of the recordings of EFL speakers’ utterances; (2) a questionnaire on the priorities in GI assessment; and (3) an interview with assessors. The data collected from the assessment and the questionnaire will be quantitatively analysed while the data collected from the interview will be qualitatively scrutinised. The findings of the study will serve as the point of reference for the teaching of pronunciation of English as a global language, developing appropriate materials for teaching English pronunciation, and assessing EFL learners’ global intelligibility.

⑥舩戸詩織・伊東治己

日本人英語学習者が流暢に英語を話せるようになるための必要条件に関する研究

スピーキング力の育成は英語教育の長年の課題であるが、英語が流暢に話せないという状況はさほど改善されていない。そこで本研究では、日本人英語学習者が流暢に英語を話せるようになる上で特に必要と思われる下位技能を抽出し、それらがどの程度スピーキング力に貢献しているかを検証した。その結果、productiveな文法力、しかも文レベルで日本語を英語に変換する力がスピーキング力に大きく貢献することが明らかになった。この結果を踏まえ、スピーキング力を高めるための効率的な指導についても具体的な提案を行う。

第4室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①山本昭夫

下位タスクの同時処理における自動化と統合化:既知の言語知識を手続き的知識にする

本発表は、外国語学習と運動技能についての試論である。外国語学習において、語法や文法を知っていることがその外国語運用につながるとは限らない。言語知識が「宣言的知識」ばかりで「手続き的知識」になっていないと、その言葉を使いこなせない。「宣言的知識」が「手続き的知識」に転移するかどうかは明確ではない。「手続き的知識」を得るには、motor skills(運動技能)の獲得が欠かせないだろう。ある一まとまりの行為(タスク)の遂行には、下位タスクの同時処理が求められ、自動化や統合化が行われると考えられる。

②大目木俊憲

日本人EFL学習者の即興スピーチ(モノローグタイプ)におけるL1関与について

本研究は、日本人EFL学習者のモノローグタイプの即興スピーチ指導におけるL1活用の効果、影響に関する研究である。L2学習時のL1活用の研究は、小林(1989)にも見られるように、ライティング研究ではその効果が明らかにされているが、スピーキング指導にL1を活用することで、学習者への心理的効果および発話内容への影響がみられるのだろうか。本発表では、大学生に対して行ったL1、L2でのスピーチ実験と実験後のインタビューおよびアンケート調査に基づき、L2スピーチにおけるL1の効用について考察する。

③上垣宗明

プレゼンテーションの評価について

本校では、2002年度より英語スピーチコンテストにかわり、英語プレゼンテーションコンテストを実施している。過去5回はほぼ同じ基準、同じ方法で評価していたが、本年度の実施で6度目となり、評価方法や評価基準を再度検討する時期にきていると思われる。過去のプレゼンテーションを概観し、英文原稿の難易度や単語数、アイコンタクトの時間や回数、発表の時間などの数値化可能なものを分析対象とし、よい評価を受けたプレゼンテーションとそれ以外のものを比較し、新しい評価方法や評価基準についての考察を加える。

④川村一代

意図的語彙学習における未知語の意味推測・記憶保持と語彙サイズ

語彙習得において、付随的学習と意図的学習のバランスが大切だと言われている。本研究は、意図的語彙学習の研究である。前回の研究で、未知語の意味の推測を行った後に目標語を暗記すると、ただ単に暗記するだけより保持が高まることがわかった。今回は、学習者の語彙サイズによって、未知語の意味推測の効果が異なるのかどうかを調べてみる。また、未知語の意味推測の成功率と意味の記憶保持の間には、何か関係があるのかについても調査したい。

⑤髙島裕臣

母語話者と日本人学習者の英語語彙情報処理における語彙特性の諸効果

同じ英単語の学習・情報処理難易は,母語話者の場合も,日本人学習者の場合も同じなのであろうか。本研究は髙島(2002)の英語語彙翻訳正答率とThe English Lexicon Project (Balota et al., 2002)の英語語彙音読潜時を、MRC Psycholinguistic Database (Coltheart, 1981)などから得た心理言語学的語彙特性を用いて分析し、母語と第2言語・外国語の語彙学習・情報処理の(非)連続性について検証する。

第5室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①清水真紀

音読パフォーマンスとリーディング・コンポーネントの関係

「文章の音読パフォーマンスはどのようなメカニズムによって遂行されるか」について調べることを、本研究の目的とする。従来からも、音読と語彙知識、文法知識、L2リーディング能力との関係については研究が進められてきたが、本研究では、リーディングのコンポーネント・モデルでコンポーネントを構成するとされる「単語認知 (単語を同定し正確に読み上げること)」、「音韻処理」、「正書法処理」を要因に加え、それらと音読の関係について探りたい。

②小笠原良浩

音声変化の指導が生徒のリスニング力に及ぼす効果について

英語のリスニングに対して苦手意識を持つ高校生は多い。彼らの苦手意識を取り除き、リスニング力を伸ばす方法のひとつとしてリンキングやデリーション等音声変化の指導が考えられる。そこで、音声変化に関する指導が生徒のディクテーションやリスニング力に及ぼす効果を検証する。また、音声変化の指導を通してアウトプット(音読)への影響が見られるかどうかという点についても検証する。高校3年生の1クラスを2グループに分け、それぞれ異なる方法でリスニングの授業を1学期間にわたって行い、その結果を考察する。

③馬場哲生

英語リスニング学習における速聴タスクの有効性

大学生を対象として速聴タスクの効果を検証した。学習内容としては英語の音声変化を取り上げ、タスクとしては書き取りを用いた。各被験者は7日間のプログラムに従って自宅学習した。前半の3日間が弱形・同化・連結などの性質を持つ音声素材(1日約30分)、後半の3日間が各種リダクションを扱ったより高難易度の音声素材(1日約40分)による学習、最終日がテストである。1日複数回のタスクの前後ならびに最終日の書き取りのパフォーマンスを実験群(速聴)・統制群(標準速度)で比較することによって、学習の効果を検証した。

④浅見道明

超分節音素を中心に開発したデジタルリスニングコンテンツの高校生の聴解能力に与える影響(その2)

大学入試センター試験にリスニングテストが導入され、高等学校の英語教員はリスニングの指導方法に関心がある。しかし、効果的な学習方法はあまり考えられていない。そこで、平成17年度に栃木県を中心にした教員でリスニング学習デジタルコンテンツを協同で開発した。 昨年度、このデジタルコンテンツの高校生のリスニング能力への効果を調べたが、その効果が証明できなかった。そこで、今年度はリスニングの指導期間を短くし、リスニングテストをTOEICのものに変えて再度実験した。

⑤竹内成美

高校でのオーラルコミュニケーション授業の実践と生徒からの評価

高校1年生のオーラルコミュニケーション(OC)クラス/週2時間を通年で3クラス教え、97名の生徒に1年間の授業内容の全てを振り返り評価してもらった。教科書に載っているリスニング練習や会話練習をそのまま用いるだけでなく、教科書を元にライブ感のある楽しい授業を目指し、ロールプレイ、タスク、各種スピーキングテスト、英語の歌や映画なども取り込んだ。生徒は何が楽しく、何が有益だと感じているのか。OCや英会話の授業を模索する先生方に参考にしていただき、生徒の目が輝く授業の実践に役立てていただきたい。

⑥十河克彰

英語で考える英語授業

コミュニケーション能力の習得には、英語で英語を考える習慣付けが必要である。

効果のあった穴埋め問題小テストと現在実験中の「ショート・コメント・イン・イングリッシュ」を紹介したい。穴埋め問題は、既習教材(教科書)から作成し、毎時間実施した。空所には単語ではなく、フレーズを入れさせた。「ショート・コメント・イン・イングリッシュ」は、言語文化、意味、歴史、語彙、語源の側面から学生の興味関心を引くような文章を自主作成し実施している。どちらの言語活動も日本語の介在はなく、英語で思考しなくてはならない。

第6室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①國本和恵

小学生英語学習者の心理要因に関する研究-英語教室に通っている子ども-

公立小学校の英語活動について多様な実践報告と研究がなされている。本研究は、英語活動に加えて、さらに英語教室に通っている公立小学生の心理要因(自己評価、英語好感度、英語コミュニケーション意欲、英語学習動機、英語不安)に焦点をあてて調査を行った。

②神白哲史

中学入学以前の英語学習経験と発音能力の関係 Ⅱ

中学校入学以前の英語学習経験がその後の英語力に与える影響を調べた研究は少ない。今研究は294名の中学生を対象に中学入学以前の学習経験を調べ、実際の生徒の発音能力の観点から経験者と非経験者を比較し、経験者の優位性があるのかということを調べたものである。学習経験を調査するためのアンケートは独自に開発し、発音能力を調べるタスクとしてはALTとの1対1でのインタビュータスクを使用した。学習経験の質的・量的な観点からの比較の結果、特定の学習経験を持つグループが高い発音能力を有することがわかった。

③山本玲子

ストーリーテリングによる意味理解と記憶の関係について

第二言語習得におけるストーリーテリングの効果についての先行研究は多くはない。が、特に入門期である小学生に対しては、母語に近い形で効果があるのではないかという仮説を立て、実験を行った。実験群が、ストーリーの語彙を「分析的に学習」した統制群と同レベルの語彙を理解でき、その後の記憶保持テストでは上回ったという結果より、子供はストーリーテリングによって、身体感覚で全体的処理をしながら意味理解を行っていること、またそれが記憶保持につながっているという結論を導き出した。

④平川知子

「読み」につなげる入門期の文字指導-“Synthetic Phonics”研究からのヒント-

「英語の単語が読めない。」これは英語学習入門期にいる日本人学習者に限った問題ではない。英語の書記法の特性からL1の国々でも問題になっている事柄である。最近では読み学習の早期の段階で明示的な“Synthetic phonics”教授をすることが最も効果的であるという報告が数多くなされ、その結果英国の教育政策の見直しも行われた。その教授法とはどんなものなのか、日本人学習者の指導に役立つことはどんなことなのかを探ってみた。

⑤渕上啓子

英語への興味・関心・意欲と英語力の変容:小学校6年から中学校1年まで

小学校英語活動で培われた英語への興味・関心・意欲と英語力は,中学校での英語学習でどのように変容するであろうか?発表者は昨年3月に小学校6年生116名(有効サンプル111) にアンケートを実施し,小6児の「興味,意欲,関心」を調査した。併せて調査対象児童の児童英検(シルバー)のスコアを入手し,アンケート調査と共に分析を行った。本研究はその追跡調査で,英語活動経験児童の小6の3月から中1の3月までの1年間での「英語への興味,意欲,関心」と「英語力」の変化を探ろうとするものである。

⑥森 博英

早期英語教育における学習開始年齢と学習者要因の関係

早期英語教育研究において、学習開始年齢の言語習得へ及ぼす影響に関する研究に比べ、学習開始年齢と学習者要因との関係を分析した研究は数少ない。そこで本研究では、学習開始年齢と学習者要因、特に、動機づけや態度などの情意要因に関して、中学生を対象にアンケート調査を実施した。その結果、学習開始年齢と英語での実際のオーラルコミュニケーションに関わる情意要因との間の関連性が高いことがわかった。この結果をもとに、早期英語教育の意義を実践的なオーラルコミュニケーション能力の育成という観点から考察する。

第7室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①中田達也

Break+名詞コロケーションの偶発的学習:意味表象の見地から

L2学習者の基本動詞+名詞コロケーションの運用能力は、学習者が基本動詞の意味に関してどのような心的表象を持っているかということと密接に関連する。そこで、本発表では学習者が基本動詞に対して持っている意味表象を、産出プロトタイプテスト、訳語再生課題および容認性判断テストによって調査した。その後、基本動詞+名詞コロケーションの知識が教育的介入によってどのように変化するかを調べた。調査の結果、直後・遅延テストにおいて項目学習・一般化および過剰一般化が見られた。

②相澤一美・磯 達夫

レベル別語彙力と読解能力の関係

本研究は、英語学習者の語彙知識の広さと読解能力の関係を調査した。これまで学習者の推定総語彙数と読解能力との間には高い相関が見られることが報告されている。しかし、頻度などの情報をもとに語彙をレベル分けし、それぞれのレベルにおける推定語彙数と読解能力、また、その下位技能との間にどのような関係があるのかについては明らかでない部分が多い。よって、本研究では、JACET8000に基づき、レベル毎の語彙数を測定できるオンラインの語彙テストを用い、読解能力全般、および、その下位技能との関係を調査した。

③岡本真由美

低頻度レベル語彙知識の測定--語彙教育に関する含意

本研究は、辞書から広範な語を任意抽出した語彙テストで英語学習上級者の語彙知識を測定し、正答率と頻度レベルの関連性を調査した。上位15,000語までの範囲で頻度別に分析を行なった結果、①平均正答率は59.7%で、②高頻度語では正答率と頻度レベルは反比例し、実測値と97.0%一致する近似直線を得たが、6,000~8,000語レベル以上の語では0.4%一致するのみであった。以上から、低頻度語彙の頻度は難易度の指標となりにくく、このことは低頻度語間の頻度差が小さいことが原因と推測する。

④土岸真由美

日本人英語初学者のための基本動詞選定-ICE-GBによってclause typeごとに選んだ動詞のリスト-

日本人英語初学者の英語学習には、英語の基本構造の習得が必須である。本発表ではタグ付コーパスであるICE-GBを資料として、これの設けるclause typeに従って動詞を調査し、clause typeごとに現れた異形を全て原形にまとめ、さらに頻度順に並べ替えたものを文部科学省指導要領の語彙の設定枠に当てはめて具体的な動詞のリストを提示する。また、この動詞リストと現行の中学校英語教科書に現れる動詞とを対比してその重複度を提示し、日本人英語初学者のための基本動詞選定の前提について考察する。

⑤多尾奈央子

音声を併用した学習が語彙習得に及ぼす影響:発音のしやすさに焦点を当てて

音声によるコミュニケーション能力の育成が重視されるなかで、見て意味が分かる視覚語彙だけではなく、聴いて意味が分かる聴覚語彙の育成も同様に重要であると指摘されている。しかし、音声を使用した語彙学習に関する過去の研究は、英語を母語とする学習者に対して行われ、更にそれらは付随的語彙学習に焦点を当てた研究であることが多い。本研究では、意図的語彙学習における音声使用が目標語の習得にどのような影響を及ぼすかを、語彙の発音のし易さの点から検証する。

⑥田頭憲二

日本人EFL学習者のL2意味範疇の再構築におけるL1語特性の役割

L2語彙習得が行われる場合,L1意味情報が学習者のL2心的辞書内に転移され,その後,意味範疇の再構築が行われるとされている(Jiang, 2000)。この意味範疇の再構築は,多くの学習者が直面する課題であり,その重要性が指摘されている。そこで,本発表はこの意味範疇の再構築の過程を明らかとするため,日本人EFL学習者を対象に,L1語特性でテスト項目の統制を行うとともに文章補充課題を用いて調査を行い,L2語の意味範疇の再構築におけるL1語特性の役割について検証を行った。

第8室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①小林雄一郎・葉田野不二美

発話コーパスにおける前置詞句の発達

発表語彙力の発達プロセスを調べることは,学習者のL2習得過程を理解する上で重要なデータや教育上の示唆を与えてくれる。書き言葉においても話し言葉においても,学習者によるアウトプットの中核を担うのは内容語であるが,機能語も文構成上で重要な働きを持つ。機能語の中でも,前置詞は,初期段階から多くのインプットがあり,学習者コーパスにおいても非常に高い頻度で生起している。そこで本発表では,習熟度レベル別に分けられた学習者コーパスを解析することで,学習者の前置詞使用および前置詞句の発達に光を当てたい。

②橋本秀徳

語彙ストラテジー,動機づけ,到達度の関係:中学生の場合

本研究は,中学生の語彙ストラテジー,動機づけ,語彙テストの関係を明らかにすることを目的としている。ストラテジー及び学習に関する項目は,Schmitt (1997),Okada (2006)・Kojic-Sabo and Lightbown (1999)を基に作成された。また動機づけは,Hashimoto (2006)を基にしている。アンケート調査は2007年6月に行われる予定であり,結果に関しては学会発表にて公表する。

③西垣知佳子・中條 清美・西岡菜穂子・Christopher Kato

英語マルチカルタを活用した中高生のための生活語彙の指導

中学校以降の学校英語教育の問題点の一つとして、以前から、生活語彙の不足が指摘されている。本研究では、小学校英語との連携を図りながら、中高生への生活語彙の指導を検討する。指導用の生活語彙は①英語絵辞書、②子どもの話しことば、③英語母語話者の語彙習得学年の調査結果を統合して抽出した。指導用の教材として、視覚教材を使いながら、学年を問わず、繰り返し多目的に活用できる「英語マルチカルタ」を作成した。発表では語彙選定と教材作成の方法、作成した教材とそれを使った指導実践の結果について報告する。

④横川博一・平井愛・里井 久輝・谷村 緑

日本人英語学習者の語彙知識と英単語親密度

われわれの研究プロジェクト・チームでは,日本人英語学習者を対象に,British National Corpus における高頻度語約3000語について,文字および音声提示による7段階評定法を用いて,英単語親密度データベースを構築した(横川編, 2006; 中西ほか, 2006).本発表では,頻度(frequency)の相関,語彙知識(その語の意味を知っているかどうか),言語産出からみた語彙(自発的発話における使用語彙)などの観点から,親密度評定値が何を意味しているのか,また,それは英語教育に対してどのような示唆を持つかについて考察する.

⑤籔内 智・里井久輝

自由連想課題による日本人英語学習者のメンタルレキシコンの一考察

本研究は、日本人英語学習者を対象に自由連想課題を実施し、得られた連想語の分析から、メンタルレキシコンの構造を探ろうとするものである。具体的には、日本語と英語の二言語について、それぞれ具象語25語、抽象語25語、上位語・下位語25組50語、合計100語の刺激を準備し、その刺激に対して最初に想起した単語を書いてもらうという調査を行った。そして、日本人英語学習者内で、日・英両言語について刺激語と連想語の関係を分類し、連想の仕方を比較した。さらには、Edinburgh Associative Thesaurusから得られた英語母語話者の連想データと日本人英語学習者のデータを比較した。

⑥五味奈津子

The Relationship Between Reading Proficiency Levels and Word Recognition Skills: Focusing on Effects of Frequency and Regularity of Words

In EFL word recognition performance, much research is being conducted to find and examine the influential factors on EFL word recognition performance. Among the many elements that have been discovered, word frequency and regularity are among the most significant. However, no research has yet been conducted to confirm the effects on these two elements with respect to reading proficiency levels. Thus, this study investigates the effects of word frequency and regularity on the performance of a word recognition task among Japanese EFL learners and how learner’s proficiency levels influence their word recognitions performances. Two hypotheses are tested: a) performances of both high and low proficiency groups are similar on high frequency regular and exception words and low frequency regular words, and b) readers in high proficiency group perform better on low frequency exception words than high frequency regular and exception words and low frequency regular words. The experiment consists of a naming task, which includes the same number of the followings: high frequency regular words, high frequency exception words, low frequency regular words, and low frequency exception words. This study may provide some significant implications on the relationship between the proficiency levels and word recognition skills among Japanese EFL learners.

第9室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①杉田麻哉・竹内 理

中学生が授業外学習に対して動機を上げるきっかけ:授業外学習のための動機づけ方略構築を目指して

本研究では、EFL中学生の授業外学習に対する動機づけ方略を構築するために、授業外での学習とそれに対して意欲的になれたきっかけを、日記法により120名の中学生を対象に調査した。この調査から得た記述を、グランデッドセオリーアプローチを基にカテゴリ化した。その結果、動機をあげるきっかけになったものは、「テスト」「他者(教員、親、など)」「(学習しようとする)自らの決意」「教材」の4つに大別でき、また、それらは授業のコンテキストにより変化をすることもわかった。本発表では、これら結果の詳細を報告する。

②若本夏美

学習者の外向性特性と英語学習:外向性は本当に愛されない要因なのか?

学習者の外向的性格が英語学習に何らかの影響を与えている可能性に関しては共通理解されてきているが(e.g., Lightbown & Spada, 2006)、学習動機など他の学習者要因と比較すると、現在に至るまでその研究が広範に行われているとは言えない。本発表ではその背景について考察し、大学生を対象におこなった研究「質問紙(MBTI)と教室の教師の判断 (teacher’s subjective rating)の関係」の報告を通し、今後の学習者の外向性に関する研究の方向性について議論する。

③桐生直幸

大学英語授業に対する学生の評価要因に関する研究-満足度と理解度の分析-

本研究は、大学における授業改善の実践事例をとりあげ、そのなかで学生の英語授業に対する満足度に影響を与える諸要因及びその変容を明らかにしようとしたものである。学生は月に1回、自己評価を行い、教師はこれに基づく授業改善を行うというサイクルを繰り返した。学習の自己評価と満足度・理解度との関係を調べるため、重回帰分析による分析を行った。その結果、授業が進むにつれて、学生の授業に対する満足度及び理解度を高める要因が変容することが示唆された。

④斉田智里

学生による授業評価と英語の成績との関係

70%以上の大学で,全学的な学生による授業評価が実施されている。調査結果の授業改善への活用が求められている。本研究は,学生の授業評価と英語の成績との関係を検討した。大学1,2年生用の166の英語クラスについて、クラスごとの成績平均値と,授業評価項目との関係を調べたところ,成績と「満足度」との間には中程度の相関が見られ,「理解度」が上がれば、成績や「満足度」が上がり、「向上度」が上がれば「満足度」が上がり、「予習復習」は成績にはほとんど関係がなく、「満足度」に負の影響を及ぼしていること,などがわかった。

⑤田中博晃

学習者の英語授業への取組みを促す要因の検証

学習者が学校の英語授業に積極的に取組むようになる教員の働きかけとは何か。近年,教室で動機づけを高める実践研究が行われ,動機づけの高まりという心理側面の変化が扱われている。その一方,学習者が学校の英語授業に積極的に取組むという態度側面に関する議論はあまり多くない。そこで本研究は,英語教育実践に密着した研究という観点から,学習者が学校の授業の中で英語学習に積極的に取組むように促す要因を検証する。

⑥泉 惠美子

The Effectiveness of Teaching Communication Strategies through Explicit Task-based Instruction

Communication strategies (CS) are important skills or devices to compensate for breakdowns and to enhance communication. CS are also crucial because they provide interactional modification of input and output to second language learners. The teachability of CS, however, is a debatable issue among researchers. This study aims at surveying the effectiveness of teaching CS; whether CS can be taught more effectively explicit instruction or implicit instruction. A strategy intervention project was planned and 15-minute training sessions were carried out in English lessons for six consecutive weeks. Participants were 46 Japanese university students who were divided into three groups: two experimental groups (EX1, EX2), and a control group (CO). In EX1, CS were taught explicitly to raise awareness, while presenting phrases and practicing them in communicative tasks. In EX2, only communicative tasks were implemented without explaining CS, although participants could refer to CS expressions printed on handouts. Before and after trainings and 3 months later, participants had two kinds of communication tasks. Data were collected and analyzed by the results of communication tasks, transcription of recorded pair conversations, and questionnaires. In conclusion, explicit CS instruction was shown to be significant among the three groups and students’ awareness of CS use was improved.

10室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①柳瀬陽介

Exploratory Practiceの特質と「理解」概念に関する理論的考察--アクション・リサーチを超えて--

教師の成長(teacher development)に資するために、従来の科学的研究(Scientific Research, SR)に加えて、近年アクション・リサーチ(AR)が英語教育研究のレパートリーに入ったが、ARと教師の成長の関係については批判がないわけではない。そういう中、Exploratory Practice (EP)という新しい流れが起こりつつあるが、EPに関しても、それとSR、ARとの差異が理論的に整理されなければ新たな流行語がわれわれの語彙に加わるだけだろう。またEPに関してはその中心概念である「理解」(understanding)についてのさらなる理論的整理が必要とされている。本発表では、EPの特質と「理解」概念を理論的に明確にすることを試みる。

②竹内春樹

理想の英語教師

学生が理想とする英語教師は、どのような人であるだろう。アンケート調査を行い、そこから浮び上がる教師像を描き出す。学生の記述内容は多岐に亘ったが、授業技術、言語能力、対人コミュニケーション能力などに分類可能であった。それらに関して結果を示すと同時に、考察を加える。アンケート回答者が、高等専門学校生ということで、他の学校の学生、あるいは生徒と違いはあるかもしれないが、どこの学校の教師にとっても参考になると思われる

③吉田達弘

英語科教師の学びの研究:理論と実践の対立からpraxisへ

「アクション・リサーチ」は、教師による研究を促進したように見えるが、理論と実践の対立は依然として存在し、理論に対する教師の不信感は拭えない。本研究では、理論と実践の対立を乗り越えるために、英語教師教育の枠組みの「社会文化的転回」を提案し、それを後押しする概念としてpraxisに注目する。Praxisとは、実践者が内省と対話を通して自らの理論を構築する試みであるが、これが、どのように教師の学びにつながるかを、ジャーナルやポートフォリオの分析から明らかにする。

④中田賀之(兵庫教育大学)

リフレクティブツールとしての教室内英語評価尺度の可能性-事例研究-

本発表は、筆者が大学院の授業において使用した教室内英語尺度に対する現職および着任前の英語教師の認識を調査した結果を報告するものである。英語で模擬授業を行った後、ビデオを見ながら尺度表に基づき、教室内英語について相互評価および自己評価を行ってもらった。その後、一連の活動に関する質問紙調査を実施した。参加者は、このような尺度は、外部試験や既存の口語英語の尺度よりも自己の専門的技能の開発に寄与する可能性があると認識していることが認められた。

⑤西山正秋

英文朗読者の視線解析

英語の文章や詩などを朗読して聞かせる場合、テキストだけを見て全く相手を見ない場合と、適度な間合いで相手とアイコンタクトをとる場合では、聞き手の受ける印象は異なってくる。ノンバーバル・コミュニケーションの中で、アイコンタクトの果たす役割は大きいが、その頻度や長さなどのデータは、主としてビデオの再生画面を見ながら手作業でカウントする方法がとられている。本研究では、視線解析用のソフトを用いることによって、朗読者が聞き手の方を見ているかどうかを自動的に判別し、数値データ化する可能性について探る。

⑥達川奎三

英語教師のコミュニケーション方略の使用と教授に関する考察

本研究の目的は高校英語教師120名を対象として、コミュニケーション方略の「使用」と「教授」に関するアンケート調査を行い、その結果と考察から教育的示唆を得ようとするものである。従来のCS研究は母語話者やL2学習者といった「言語使用者」に焦点をあてたものが多く、「言語教授者」に注目した報告は少ない。Celce-Murciaら(1995) による外国語教授を意識したCSリストに基づく30項目に関して、「自分の使用頻度」「指導の必要性」「実際の指導」の三つの観点から5件法により回答を得た。

11室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①原田尚孝

中学生が意欲的に「書くこと」の活動に取り組む英語指導についての実践研究

国立教育政策研究所教育課程研究センターが実施した中学校教育課程実施状況調査の結果が平成17年9月に公表された。その中の「書くこと」の結果分析において,特に以下の2点について,十分に改善されたとは言えない状況が明らかになった。

・後置修飾,不定詞などの文構造(文構造理解力)について課題がある。

・まとまった内容の文章を書くこと(文章構成力)が弱い。

この状況を改善すべく、生徒が意欲的に「書くこと」の学習に取り組み,豊かな表現力を身につけることのできる指導と評価のあり方について,今までの実践と事前・事後テストの結果比較をもとに発表する。

②三木 望

議論文のライティングに必要な発表語彙-モデルエッセイ・コーパスの分析を通して

本発表はTOEFLのモデルエッセイコーパス(320テクスト、100,064語)を参考書から集めてコーパスを作成して、議論文のライティングで必要な発表語彙をJACET8000のカバー率とワードリストを照合して述べる。LOCNESSのネイティヴの議論文と比較しながら、参考書で有用とされている機能的表現及び連語の頻度を主題別に調べる。学習者が低頻度だが主題によっては習得しなければならない語彙と議論文で必要とされる高頻度な語彙を区別して、客観的なデータに即したライティングの発表語彙を提案する

③麻生雄治

Written Peer Responseが英作文の推敲に与える効果

英作文を書き直す際の相互評価(ピア・レスポンス)活動にはOralによるものとWrittenによるものが一般的である。本研究は,それぞれ(あるいは両用)によるフィードバックが英作文を書き直す際の「内容」,「文法」のそれぞれの観点においてどのような効果があるかを調査する。Peer responseは(特にunskilled writersにおいて)内容面の書き直しにあまり効果的でないという報告もあるが,英語力の高くない日本人英語学習者(高校生)の場合,英作文の推敲にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。

④佐藤臨太郎

Accuracy vs. Fluency, or Accuracy and Fluency?: The Relationship Between Fluency and Accuracy in Writing

In writing classes at Japanese high schools, accuracy has traditionally been regarded as more important than fluency, and learners have concentrated more on accuracy rather than fluency in order to obtain high scores in the accuracy-oriented written tests. However, in improving learners’ communicative skills, fluency is becoming more and more important, and we have seen the transition from the traditional, accuracy-oriented English class to the fluency-oriented one. Nevertheless, some educators and researchers question the effectiveness of, or the need for communication and fluency-oriented teaching. We can see a swing of the pendulum with regard to the importance of accuracy in grammar-oriented teaching. There seems to be a controversy over this transition. This study investigated the relationship between accuracy and fluency in high school students’ writing, and also considered the influence of the teacher’s direction on learners’ writing. Results showed that there was a positive correlation between accuracy and fluency, and that direction encouraging students to write fluently was more influential on their writing than that encouraging them to write accurately. Based on these findings, pedagogical implications and suggestions are presented for the teaching of writing. 

⑤島田勝正

英作文における気づきから再構成に至る過程を促進する要因

アウトプット仮説では、まずアウトプットさせて自分の問題点に気づかせることを重視する。本研究では、大学生を対象に、条件付きエッセイライティングを課し、自分の問題点を列挙させた後、焦点を当てる文法項目および語句の頻度を統制したモデル文(インプット)を与えて自己添削(認知的比較)させた。1週間後に同一課題を課し、当該の文法項目と語句に関して、修得(再構成)の度合いを比較し、気づきから再構成に至る一連の過程とその修得を促進する要因を考察する。

⑥高橋愛紗

フレーズを意識させた指導法が文章要約課題に与える影響 

本研究は、フレーズを意識させた読解と音読練習がどのように言語産出に影響を及ぼすか調査した。指導法Aでは、フレーズを意識させた指導を行い、指導法Bでは、担当教員の普段の指導法で行われた。調査の結果、教材は、フレーズ単位に学習者に呈示した方が効果的であるということを示す。

12室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①笠原 究

The Effects of Speech Rate and Task Characteristics on the Item Difficulty of the Center Listening Test

The purpose of this study is to investigate whether speech rate and task characteristics affect the item difficulty of the listening test of English proficiency administered by the National Center Test for University Admission or Daigaku Nyushi Center Shiken (hereafter the Center Listening Test) in 2006 and 2007. The analysis were conducted besed on the data from 244 (in 2006) and 254 (in 2007) third-grade high school students who took the Center Listening Test respectively. The results shows that whether speech rate affects the item difficulty depends on the task characteristics. It was also found that the items require appropriate responses, or which include implicit or paraphrazed information are more difficult than those which require understanding or guessing from explicit information.

②蒲地賢一郎

発話音と発話場面との相互関係

英語のリスニング力を高めるために映画を使った授業の実践報告をする。学生に発話としての英語音を聞かせ、発話の聴き取りをする。だが音のみでは発話が伝える意味を理解できない場合が多々ある。英語音だけでなく発話のなされている場面を見るのが、その意味を理解するのに効果的である。一方で、音そのものに主眼を置くと、発話内の大きい音は比較的聴きとれるが、小さい音は聴きとれない場合が多い。そこで日本語音を「中ぐらい」の音として、英語、日本語の両言語の音を比較しながら、英語音の大小を見直してみる。

③飯村英樹

リスニング・リコールの分析単位:「アイデア・ユニット」 vs. 「トーン・ユニット」

本研究の目的は、リスニング・リコールの採点に用いる分析単位の妥当性を検証することである。Iimura(2007)及び飯村(2007)の継続研究となる本研究では、Sakai (2005)に基づくアイデア・ユニットとトーン・ユニットの2つの分析単位に焦点をあてる。被験者は日本人大学生約80名で、英検準2級のパッセージを用いてリコール・テストを実施し、プロトコルを2つの分析単位を用いて採点を行う。その結果を外部基準テストとの相関を中心に分析する。分析結果の詳細は当日報告する。

④竹野純一郎・高塚成信

日本人英語学習者の聴解力の伸びを説明する要因について

本研究では,日本人英語学習者を対象に,聴解力に影響を及ぼすと考えられる要因に関して調査を行うものである。参加者である高校1年生の語い・文法力,読解力,日本語・英単語音読速度,英語復唱力,数字記憶範囲,英語読解速度などの聴解力を説明し得る要因を縦断的に調査し,聴解力が伸びた学習者はどの要因が変化しているのかを調べる。学習者の聴解力の伸びを説明し得る様々な要因を,英語復唱力に焦点を当てながら追及する。

⑤高山芳樹

シャドーイング技術と英語運用能力との関係を探る(1)

本研究の目的は、日本人大学生英語学習者のシャドーイング技術と英語運用能力がどの程度かかわりを持っているのかを調査することである。英語専攻の大学生56名を対象に学期末テストとしてシャドーイング・スキルテストおよびTOEIC IPテストを実施した。シャドーイング・スキルテストの採点法としては、玉井(2005)が提唱している「チェックポイント法」を用い、両テストの得点の相関係数を算出することによって、シャドーイング技術とTOEIC IPテストによって測定された英語運用能力の関係を探った。

⑥大田悦子

意味への注目はシャドーイングに有効か?~音声知覚と内容理解~

英語専攻の大学生対象に行ったシャドーイングと直後の内容再生テストの結果を比較・検証する。先に行った分析で、6つの異なる条件下(3種類の速度×2種類の目的-内容再生予告あり or なし-)において復唱率だけでなく意味的エラー・音韻的エラーの出現割合に変化があることがわかった。それに続いて今回はシャドーイング時の音声知覚と内容理解との関係に注目する。正確に復唱できても内容を再生できなかった部分、再生できても復唱できなかった部分を詳しく検証し、シャドーイングというタスクとそのプロセスについて考察する。

13室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①伊庭日出樹

中学校・高校英語教育におけるブックトークとパスファインダ-の利用の意義と可能性

ブックトーク(book talk, booktalk)とは1冊から数冊の本をある一定のテーマに沿って紹介し、聴き手に読書への動機付けと興味関心を喚起することを目的とする活動のことである。今回の発表では、英語教育においてブックトークを行うことの意義を探り、いかなるブックトークが今後英語教育において可能であるかについても検討するものである。また、ブックトークにパスファインダー(pathfinder)を併用することについてもその意義と可能性を探る。

②森永弘司

教室に英詩を-映画を利用した英詩指導の試み

近年大学ではTOEICのような実用英語あるいは学生の専門に特化したESPが英語教育の主流を占めるようになってきた。その結果、余りにも「口語」とか「実用」とか「速さ」あるいは「専門性」が重視され、じっくり考えて読む精読や教養を身に付けるための英語教育が等閑視されてしまった感があるように思われる。そこで今回の発表では、実用からはほど遠く、じっくり考えなければ理解できない英詩を、教養課程の英語で教えることにどのような意義があるのかを探るべくおこなった英詩鑑賞を中心とした授業の実践報告をおこないたいと思う。

③久世恭子

Communicativeな文学利用を考える

日本の英語教育では、文学作品は訳読や文学解釈を中心に主に中上級者向けの授業で利用されてきた。本研究では、1980年代の英米において、文学作品こそcommunicativeな活動を産出しやすいauthenticな教材であるという考えのもと外国語学習の中での文学の役割が再評価され、同時に学習者のレベル・対象教材・教授法の範囲が広がったことに注目する。具体的には、大学初級の授業で青少年・児童文学を用い、Language-based approachの効果的な応用を模索しながら、このような授業に対する学習者の反応について論じたい。

④二五義博

多重知能理論の身体運動的知能を生かした英語指導法-体育および他教科の視点を入れた新しい中学校英語教育の可能性-

アッシャーのTPR(全身反応法)は主に小学校で用いられているが、中学校での身体を利用した英語指導法の効果はあまり研究されていない。そこで本研究はハワード・ガードナーが提唱した多重知能理論の1つとして挙げられる身体運動的知能を生かした指導が、中学校の英語学習にいかに効果的であるかを理論的に考察することを目的とする。また、アメリカと日本での実践例の考察をしながら、語彙・文法など言語的知識と内容重視の英語教育の両面から、体育・理科・数学・音楽などの教科内容を英語の授業に取り込んでいく可能性を示唆する。

⑤ストーリー・クリストファー W

Facilitating communication outside the classroom: how blogging can help

Facilitating communication in English outside the classroom is one important challenge for any teacher. Whilst opportunities to listen to, and speak in English are often limited for Japanese university students, communication based on reading and writing, using visually attractive blogs, is achievable. To date, however, research related to blogging has mostly focused on their use in writing classes, with little work done on how blogging may enhance speaking-orientated courses (Pinkman, 2005). This presentation aims to contribute to knowledge in this area by reporting the results of research into how blogging was used and perceived by undergraduate science students. Using freely available software, students worked in pairs to create blogs based on topics of personal interest utilizing the idea that "a picture speaks 1,000 words". Students alternated between adding content and using the comment function to send messages to fellow participants. Of the 120 students who took part in the research 90% reported, through questionnaires, that communicative blogging was enjoyable, and 88% thought that it had helped to develop English skills. In addition, of those who used their blogs to make in-class presentations, 80% reported this to be a worthwhile experience. Guidelines on how to add communicative blogging to any course will be provided. (Pinkman, K. (2005). Using Blogs in the Foreign Language Classroom: Encouraging Learner Independence. The JALT CALL Journal, 1(1), 12-24)

⑥山本真理

教室から学習者のコミュニティへ

教室における学びは、教師と教材によってのみ与えられるものではない。複数の学習者が存在する教室では、学習者同士が個々に関わり合い、彼らの人間関係が教室全体の学びに影響を及ぼしている。各学習者によって意味のある学びを生み出すために、教師は学習者と共に、コミュニティとしての教室のあり方を考える必要があるのではないか。本発表では、工業高校で所属学科の異なる生徒たちが選択したライティングの授業において共に学び、コミュニティを作っていく過程について、生徒の作品、生徒からの授業に対するフィードバック、教師のジャーナルから考察したことを述べたい。

14室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①今井隆夫

認知言語学の英語教育への応用の可能性(2)---動詞のperfectiveとimperfectiveの概念を中心に

認知言語学の考え方を英語学習に応用する際に最も大切なことは、カテゴリー化、プロトタイプ理論、メタファー・メトニミーによる意味拡張などの概念が、語彙・文法などの説明の際に、背後にある縛りとしてつねに意識される点であると考えられる。本発表では、David Lee(2001)による可算・不可算名詞の説明としての有界性、均質性の概念が、抽象レベルでは、動詞の完了用法(perfective)と未完了用法(imperfective)の説明にも利用できるという理論に基づき、動詞のperfective・imperfectiveに焦点を当て、母語話者への意識調査結果とあわせて、英語教育への応用の可能性を考察したい。

②赤松信彦・田中貴子

日本人大学生の英語冠詞に対する知識

外国滞在経験のない日本人大学生233名を対象に、Kharma (1981)で使用されたテストを改良し、英語冠詞に対する知識を調査した。冠詞に関するテストは定冠詞、不定冠詞、無冠詞に関する空所補充問題、各解答に対する理由の記述、及び、解答の正答性に対する自信度(5段階)の表示から構成された。問題数は、定冠詞・不定冠詞項目に対し10問、無冠詞項目に対し15問、合計40問であった。本発表では、解答の正答率とその正答性に対する自信度の分析に基づき、英語冠詞に対する日本人学習者の知識構造について考察する。

③渡辺眞一

高校英語教育での分詞構文の取り扱われ方についての考察-分詞構文の持つニュアンス・使用場面は高校でどう教えられているか-

分詞構文のもつニュアンスとはどのようなものなのか、どんな場面で使用されるのかを明らかにしたうえで、高校英語でどのように分詞構文が教えられているのかを調査し、どのように取り扱われるべきなのかを考察する。

高校の英語文法の授業ではのべ2~3時間かけて分詞構文の形と意味を教えているが、そのニュアンス・使用場面についてはほとんど伝えていないうえ、それらを正確に理解している高校英語教師は極めて少ないと思われる。教科書文法指導書調査・質問紙等で現状を明らかにし、あるべき分詞構文の取り扱いを考察する。

④佐藤和彦

代名詞の訳について~ゼロ代名詞と「そ」を中心に~

自明のこととしてあまり取り上げられることのないテーマであると思われるが、日本人学習者にとっては重要な問題であると思われる。日本人学習者は英語を学習しようとする際にどうしても日本語の訳に頼ってしまう傾向があるように思われる。そのような場合、代名詞の訳は学習者を混乱させる一つの要因となり得る。本発表ではゼロ代名詞と「そ」を中心にその問題点を考察してみたい。

⑤浅見吏郎

「数」を使って基礎の総復習-英語が苦手な学生への指導-

最近は、人称をはじめ動詞の変化でさえ曖昧という、文法の基礎項目を習得していない学生が目立つ。リメディアル教育の一環として、中学からの英文法を効率よく教授するにはどうすればよいのかと、常日頃考えている。一つの試みとして、昨年より「数」に注目して授業を展開している。人称や動詞の形など、これまでの授業の経過を発表してみたい。特に、英語が全然解らないという生徒・学生さんを抱えている先生方に、お役に立てればと考えている。

⑥戸出朋子

外国語理解における複合文の統語処理に関する一考察:事例基盤の言語学習の視点から

外国語読解の際、複雑な文の統語処理ができず、理解に失敗するという問題がある。本研究の目的は、制約に基づくモデルの枠組みでの文処理研究の成果を、事例基盤の言語学習モデルの立場から考察し、問題解決のための研究の方向性を展望することである。文献調査に基づき、1)統語処理の成功・不成功は、多くの事例体験を通して徐々に形成される構文スキーマの定着度に左右され、2)複合文の構文スキーマは、単文のスキーマや決まり文句表現を基に徐々に形成され強化されると結論付ける。最後に今後の実証的研究の方向性を示唆する。

15室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①宮迫靖静

PracticeはEFL習得においては無用の長物か?

ACT-R理論からの一考察-

Practice makes imperfect.”及び“Drill and kill”等の表現が散見されるように,第二言語習得研究におけるpracticeに対する評価は低い.しかし,これは日本人学習者のEFL習得にも当てはまるのだろうか.いわゆるコミュニケーション・タスクがEFL習得における有効性を示すことができない現状において,practiceが果たす機能及び役割に関して,ACT-R理論(Anderson, 1993, 1998)に基づいて考察する.

②飯田 毅

帰国子女の明示的知識と非明示的知識の関係についての一考察

本研究の目的は、臨界期以前に英語圏に滞在した経験のある大学生(帰国子女)の明示的知識と非明示的知識の関係を日本で英語教育を受けた大学生の場合と比較することによって、両者の関係を明らかにすることである。ほぼ同等な英語力を持った二つのグループの大学生を対象にして、TOEIC、文法性判断テスト、文法適正テスト、ライテングテストを実施した。その結果、明示的知識にアクセスできる日本人学習者に対して、帰国子女は、非明示的英語知識を持ち、明示的知識にアクセスできないことが分かった。

③中村光孝

日本人英語学習者は英語の名詞修飾構造をどの程度習得しているか

本発表は日本人英語学習者が英語の名詞修飾構造をどの程度習得しているかを調査に基づいて検証するものである。第二言語習得研究としての英語の関係節の習得研究の多くは、Keenan and Comrie (1977)が提唱する「関係節化の可能性の階層」におおむね一致するという結果が出ている。本発表では英語の関係節のみならず分詞による後置修飾や不定詞の形容詞的用法などの名詞修飾構造を日本人英語学習者がどの程度習得しているかを明らかにし、文法指導に役立てたい。

④竹内典彦

学習者主体の語彙の意味習得に関する試み-つづり字の情報を徹底的に利用する-

情報系の大学で、教養科目として、リーディングの講義を担当している。学生の英語力は多様であるが、ここ数年、学生の語彙力に関しては、たいへん悲観的であり、基本的な語彙も十分定着しているとは言えない。本実践では、学生自身に語彙の意味習得について考察させた上で、単語のつづり字情報を徹底的に利用し、意味習得を実現する試みをした。語彙の習得には、多読から機械的暗記まで様々な方法がある。本実践が、つづり字を利用した意味習得の可能性の一つの示唆になれば幸いである。

⑤中西 弘

日本人英語学習者のL2ワーキングメモリ容量がFiller-Gap文処理に与える影響について

ワーキングメモリ(Working Memory:WM)は、情報の処理・保持を同時に行なうことを可能にするL1・L2言語処理の基礎システムであると考えられている。L1研究では、WM容量とFiller-Gap(F-G)文等の文処理との関連が指摘されている。F-G文とは、Which book did you read? のように、文頭の目的語がfiller(移動した要素)となりgap(元の位置)を探す必要がある文で、理解の際には、Filler情報をGap位置までWM上にとどめておかなければならない。本発表では、日本人英語学習者の持つL2WM容量とF-G文処理との関連を1 Filler-Gap間の距離 2 Fillerの統語情報の種類が文処理に与える影響 という視点から報告する。

⑥佐久間康之

二重課題の記憶表象における系列位置効果の特徴

ワーキングメモリ内の英語の音声情報の働きを測定する2種類の二重課題のスパンテストにをもとに、各テストの記憶再生の特徴を系列位置効果の視点から探っていく。

 

16室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①猪井新一

物語における日本人英語学習者の指示表現の産出プロセス・方略について

本発表の目的は文レベルを超えた物語というディスコースレベルにおいて、日本人英語学習者は物語の登場人物に言及する際に、どのようなプロセスや方略を使用しているかについて記述・説明をすることである。学習者の産出した英語のテクストを分析し、L1 transfer のみならず、simplification、教授転移、overgeneralization等、様々なプロセス・方略について、学習者の英語力との関係から分析し、外国語習得理論および外国語教授に対する示唆についてもふれたい。

②野村真理子

日本人英語学習者の産出モードの違いによる言語特徴の分析

本研究は、日本人英語学習者が産出した発話と作文を用いて、学習者の言語を記述し、産出モードの違いによる言語特徴を分析するものである。中学校・高等学校それぞれの同一学習者集団の同一テーマでの発話データと作文データをコーパス化し、学習者コーパスを用いて、モード別に言語使用について分析し、産出モードの違いで差がでている項目をあげる。そして、日本人英語学習者の話し言葉と書き言葉の言語習得について、同一学習者集団の2つのモード間の言語使用実態の比較に基づく仮説生成の可能性について考察する。

③江草千春・横山吉樹

物語タスクにおける自己修正の分析:帳尻あわせ効果のメカニズムの考察

これまでのタスク研究では、学習者の発話は、流暢さ、正確さ、複雑さなどの尺度をそれぞれ独立して計測し、言語運用能力について調査するものが多い(Yuan & Ellis, 2003)。しかしながら、本研究では、自己修正に焦点をあて、流暢さ、正確さ、複雑さとの関係を調べる。そして、発話中にも帳尻あわせの効果を生み出すメカニズムがあることを考察する。

④沢谷佑輔・横山吉樹

どのように作文課題の修辞法が学習者の注意と問題解決方略に影響をあたえるのか

本研究では日本人大学生の英語学習者を対象とした、Argument task, Narrative taskの二つの作文課題を行っている際に向ける注意と問題に直面した際に用いる問題解決方略について調査した。これまでの課題の種類の効果を調査した研究(Cumming 1989, Way et al.,2000など)では作文の過程とproductとの関係を実証した研究はほとんど見られていない。本研究ではこの二つの関係を中心に考察していく。

⑤村端佳子

英語学習が日本人英語学習者の認知に及ぼす影響

Vivian Cook はL2学習者の言語能力をmulti competenceと名付け、それはL1とL2が混在する状態であり、本質的に両方のいずれの言語話者とも異なる特異なものである、と主張する。さらに、L2学習の結果、ものの見方や考え方も変化してくるとも言っている。本研究では英語学習が日本語話者の「もの」の結びつきの感覚に影響を与えているかどうか、を調査した。結果はCookのmulti competenceの主張を支持し、確かに英語の学習が進むと、「もの」の結びつきの感覚が異なるということがわかった。が、さらに多くの研究が期待される分野であるということも付け加えたい。

⑥樋口勝政

日本人英語学習者における英語関係節の習得について-日本語と英語の関係節構造に関する分析的知識と英語関係節の習得状況の比較調査-

本研究では、日本人英語学習者における日本語と英語の関係節構造に関する分析的知識の程度と、英語関係節の習得状況の関係を比較調査した。日本語の分析的知識に関しては、関係節を含む日本語文を2文に分解するテスト、同格節と関係節の区別を判断するテストを用いた。英語関係節の分析的知識に関しては、関係節を含む英文を2文に分解するテスト、文法性判断テストを使用した。習得状況については、和文英訳を用いて行った。扱った関係節構造は主格、目的格、所有格用法である。各テスト結果に基づいて発表を行う。

17室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①箕輪美里

単文理解と文章理解の関係-日英語の照応表現の違いに焦点をあてて-

「一文一文はわかるけれど文章全体になると何を言っているかわからない」という学習者がいる。その原因として考えられることの中から、本研究では日英語の照応表現の違い(特に代名詞)に焦点を当てて、その影響の有無を調べた。具体的には、先行詞の有生性や、先行詞と代名詞の距離、言い換え表現における日英語の違いが、一文一文を理解している学習者にとって、文章理解の妨げになるかを検証した。

②勝藤和子

英語動詞の分類による教科書分析と比較

本研究は、項構造を基準にした動詞分類に基づき教科書分析を行った上で,言語間の差異が引き起こす習得の困難性に関する先行研究を踏まえた考察を行うものである。分析対象となる教科書は国内の高等学校の検定教科書であるが,先行研究であるJuffs (1996)の教材分析結果と比較し,教育現場や教材開発への提案も行う。

③濵野由紀子

読解中に生成された質問とリコールパフォーマンスの関連について

読解中に質問を生成する活動が文章の内容理解を促進することがわかっているが、第二言語読解研究において、読み手による質問生成がテキストのどのような部分の理解を促進するのかについては明らかにされていない。本研究では、生成された質問と、筆記再生テストにおいて再生された情報との関連を中心に、質問生成活動が読み手の英文内容理解にどのような影響を与えるのかを質的に検証する。

④浅井智雄

説明的テキストの論理構造の把握を目指した意図的指導の効果-高校生を対象とした読解指導への応用可能性-

パラグラフの論理展開を把握させることを目指し,トピックセンテンスや主題を指摘させるなどの指導が行われている。しかし,その効果の検証は十分であるとは言い難い。また,先行研究でも,テキスト構造を認識させるための意図的指導の効果を検証することの重要性が指摘されている。本研究は,トピック―支持文構造およびListing構造を持つパラグラフを素材とし,実験群と統制群を設け指導内容に違いを生じさせることがパラグラフの論理展開認識の度合いにどの程度の違いを生じさせるかを統計的手法を用いて検証した実証研究である。

⑤髙木亜希子

学習者の自律を促進するリーディング授業

大学2年生を対象に、学習者の自律を促進することを試みた一年間のリーディング授業の実践報告である。筆者はこれまで学習者中心の授業を実践してきたが、学習者の自律を促す活動は不十分であった。本授業では、学習者の選択、学習を振り返る機会、ピア・サポートの3つに焦点を絞り、自律学習を促す様々な活動を取り入れた。年度末の学生によるアンケート結果によれば、活動により、自律学習促進への有効性に違いが見られた。実践を通して明らかになった効果と課題に基づき、学習者の自律を促進する授業のあり方について考察する。

18室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①河上昌志

中学校の英語教科書採択に関する諸問題の考察-北海道の現状と課題、そして改善策-

中学校の英語教科書は現在7種類発行されているが、北海道では3種類しか採択されていない。教科書採択の歴史的変遷(学校採択から広域採択)から、現状の問題点などを整理し、具体的な改善策を提言したい。さらに、1県で1種類の教科書しか採択されていない(いわゆる、「県定教科書」)ことにも言及していく。教科書会社へのアプローチからわかった教科書会社の苦悩、そしてまだ明らかになっていないベールに包まれた部分にもメスを入れ、発表会場で提言したい。

②富田恭代・鈴木 渉・Jessop Lorena

模倣テスト:暗示的知識の測定に向けて

模倣テスト (elicited imitation) とは、学習者に文を聞かせ、それを模倣させることで文法習得度を測定するものである。模倣テストは、元来、母語習得研究で使用されてきた測定法であるが、1970年代から第二言語習得研究でも使用されるようになった。近年、第二言語習得研究では、暗示的知識 (implicit knowledge) を測定するための模倣テストが注目されている (Ellis, 2005; Erlam, 2006)。本発表では、データ収集、分析、報告の各段階における、暗示的知識測定のための模倣テストの使用法と注意点を理論的・実証的研究成果に基づいて述べる。

③八島 等

学習者の正答率を基にした語彙サイズ推定テストの開発

語彙サイズを測定するテストは望月テストが有名だが、それに代わる語彙サイズ推定テストを頻度順に、1,000~6,000語レベルまで開発し、本学会で発表してきた。そのテストを実施した結果、1,000語レベルであっても大学2年生でも、正答率が50%未満の語が散見された。その一方で、6,000語レベルであっても高校1年生でも正答率が90%以上の語が数語あった。そのことから、頻度ではなく、正答率を基にした語彙サイズ推定テストを開発すれば学習者の語彙サイズを今まで以上に実態に即して測定することができると考え、実際に作成し、実施してみた。

④印南 洋

Multitrait-Multimethod デザインを用いた研究の再分析:確認的因子分析を用いて

本研究の目的は、「言語能力」と「テスト方法」のどちらが「言語テスト得点」により影響を与えるかを調べることである。この目的のため、言語テストの分野で MTMM (multitrait-multimethod) デザインを用いた研究 (e.g., Buck, 1992) を、確認的因子分析を用い再分析する。具体的には、(1) 原著論文のモデルの復元を行い、確認的因子分析を用いたより厳密な状況下で、著者の解釈の適切性を再検証する、(2) 原著論文では扱われなかったが競合する複数のモデルの比較分析を行う。再分析結果に基づき、構成概念のよりよい定義・解釈、知見の蓄積に向けた示唆を述べる。

⑤久保裕視

WIHICの日本のEFL環境における有用性について

WITIC (What is happening in this classroom?) questionnaire (Fraser et  al. 1993) は教室における学習に付随する社会・心理的側面と学習成果との関係を測定するために開発され、7項目(1: Student  cohesiveness, 2: Teacher Support, 3: Involvement, 4: Investigation, 5:  Task orientation, 6: Cooperation, 7:  Equity)にわたり教室環境についての調査を行うが,その測定方法としての妥当性は,様々な国におけるいろいろな教科指導において確認されている。 本研究では,WIHICで日本のEFL環境を測定し、その結果について発表する。

⑥卯城祐司・中川知佳子・森本由子・土方裕子・渡邊芙裕美・甲斐あかり

読解テストにおける質問タイプが項目困難度に及ぼす影響:自由記述式と多肢選択式の比較

本研究は自由記述式・多肢選択式読解テストにおいて、質問タイプ(パラフレーズ、推論、テーマ)が項目困難度に及ぼす影響を検証した。実験1では自由記述式で実施した結果、上位レベルの質問は下位レベルの質問よりも難易度が高いという仮説が支持された。一方、実験2では同じテストを多肢選択式で実施したところ、質問タイプによって難易度は変化しないこと、また自由記述式から多肢選択式テストの正答率を予測できる割合が小さいことが明らかになった。従って、テスト形式によって質問タイプの影響が大きく異なることが示された。

19室

発 表 者 発 表 題 目

要 旨

①清永克己・小川直義・平井清子・ロバート・ファウザー

日本・韓国・台湾の高等学校学習指導要領における英語科に関する比較研究

英語は国際共通語として広く使われており、年を追って英語を使える人材を社会が求めてきている。日本では文部科学省から「『英語が使える日本人』の育成ための戦略構想」が発表され、ますます英語のコミュニケーション能力の育成が重要な課題の1つとなっている。韓国、台湾ではすでに小学校から英語教育が導入されており、その関心の高さが分かる。教育の原点である学習指導要領を目標、言語材料、題材内容、指導方法など9つの観点から比較研究し、それぞれの国と地域で行われている取組みについて明らかにしようとした。

②長沼君主・永末温子

香住丘Can-Doグレードに基づくCan-Doチェックリストの開発とその運用

平成15年度SELHi指定校である福岡県立香住丘高校において、4技能統合型シラバスに基づいた「香住丘Can-Doグレード」が開発された。このような具体的な能力記述に基づくフレームワークに加えて、ポストSELHi研究において学習者の自己評価を可能とするCan-Doチェックリストの開発が行われた。発表ではパイロット調査の結果と合わせて、外部評価としての「清泉アカデミックCan-Do尺度」の結果を共に示し、加えてGTECによる客観的能力評価も含めて、能力発達の過程を実証的に検証したい。

③工藤洋路・根岸雅史・井上千尋・吉池陽子

高校生Can-do statementsの精緻化の方向性~ライティング能力(E-mail)調査の事例を中心に

本研究の目的は、学習者の自己申告に基いて開発したCan-do statementsと、高校生の実際のパフォーマンスを照らし合わせて検証し、更なる精度の高いCan-do statements開発につなげることである。実際のパフォーマンスを測定する媒体は、リーディングでは新聞記事、リスニングではインターネットラジオ、ライティングではE-mail、スピーキングでは電話とする。各技能において、実際のパフォーマンスと、GTEC for STUDENTS(㈱ベネッセコーポレーション)のグレードや学習者の自己申告結果をつけ合せ、Can-do statementsの精緻化の方向性を探る。特に、E-mailを用いたライティング能力調査の事例を中心に考察を行う。

④川手-ミヤジェイェフスカ 恩

TOEFL iBTについて

2005年9月、40年以上に亘りTOEFLテストを実施・運営してきた米国の非営利教育団体ETS(Educational Testing Service)は、米国でTOEFLテスト初となるSpeakingセクションおよびIntegrated Taskを加え4技能を測定するTOEFL iBT(インターネット版TOEFLテスト)を開始した。日本では2006年7月にTOEFL iBTが実施された。この発表では、TOEFL iBTの内容および最新情報について紹介する。

⑤永末温子・長沼君主

動機づけの診断による自律的学習支援環境の構築-ポストSELHiにおける個別フィードバックの実践研究

福岡県立香住丘高校において、ポストSELHiとして共同研究を継続する中で、動機づけ調査の対象を全クラスに拡大し、「言語学習動機づけ診断調査レポート」によって、調査結果の個別フィードバックが可能になった。各生徒は、GTECスコアおよび診断調査結果からどのように自分の学習意欲がスコアに反映されるのかを客観的に認識することができるようになり、また教師も生徒の学習意欲と英語運用能力の関係を詳細に把握することが可能になった。現在その効果的なフィードバックの方法について、継続的に実践研究中である。

 

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