8月4日(土)

第1室

  者 発   

要 旨

①猫田和明

小中連携におけるポートフォリオの役割-オランダの事例から-

オランダではCommon European Framework of Reference for Languages (CEFR)に準拠して開発されたコンピュータ化されたポートフォリオが2007年6月にEuropean Language Portfolio (ELP) として正式に認可される。本発表ではその一部を紹介するとともに、異なる教育段階におけるカリキュラムの連続性を高める手段としてのポートフォリオの役割とその諸条件について論じる。

②東 仁美

大学での児童英語教育インターンシッププログラム

 

 

聖学院大学では、児童英語教育科目として、理論・ワークショップA/B・インターンシップI/Ⅱ・カリキュラムデザイン・教材研究の7講座を開講している。インターンシップⅡでは、さいたま市の放課後居場所事業の協力を得て、学生が毎週60分の授業実習(履修期間中1015)を行っている。この実習に係る大学の授業での指導案作成から、教材・英語台本の作成、模擬授業までの指導の実践報告を行うとともに、履修した学生が、中・高の教育実習や就職先でどのような成果を上げているか、フォローアップ調査を分析する。

③幸田明子

小学校英語教員養成における一考察-ブリッジ制導入の効果-

 

 

 

日本では、公立小学校での英語教育に関する反対論が相変わらず盛んに論議されているが、教員養成はすばやく対応策を実践すべき課題のひとつである。常葉学園大学外国語学部では、外国語学部の学生に中.高の教員免許と同時に小学校教員免許を取らせるブリッジ制を平成12年から導入している。3年生の6月に小学校での教育実習を行うが、英語を導入している小学校が年々増え、英語での研究授業の要望が高まっている。ブリッジ制での教員養成の現状と課題、教育実習の現場からのフィードバック、卒業生の進路などから、小学校英語教育を充実させるための教員養成について、一考察をしたい。

④新山美紀

児童英語教育コース:4年制大学・学科の1コースとしての取り組み

 

 

小学校での英語活動が始まって久しい。今後、英語が小学校で必修となることを踏まえ、近年、多くの短大、大学で、指導者養成等を目指し、児童英語関連の科目、カリキュラムが導入され始めている。本発表では、4年制大学・英米文学科の1コースとして児童英語教育に取り組んだ学生たちの2年間の活動を報告する。3年次から始まるこのコースでは、「子どもに英語をどう教えるのか」ということを理論と実践の両方から時間をかけてじっくり学び、4年次で大学付属の生涯学習センターの子ども英語講座で教育実習を行い、その活動を記録した。

第2室

  者 発   

要 旨

①横田玲子

大学2年生専攻語学「総合英語」授業でこそ、英語を使おう!

 

 

本発表は、大学2年生の専攻語学「総合英語」で、自主教材を中心に学生らが進んで英語を使おうとする授業を追求した実践報告である。英語が自由に使えるようになりたいと学生たちは強く思っているが、授業では受動的な態度が目立つ。日本人の学生同士で「会話」の授業以外で英語を使おうとする場面も少ない。「総合英語」で、学生たちがグループで英語でのタスクを遂行し、パワーポイントの使用法を自主的に学び、自らが活躍する英語学習を試みた。客観的な評価、評価の観点など課題は残るが、学生たちの喜々とした学習場面が見られた。

②中條清美・西垣知佳子

BNCからのESP学習語彙の抽出とWeb教材の作成

 

学習者のニーズに合わせて目標分野を限定し,その分野特有の学習内容を指導することによって学習効率を上げるESP が注目されている。本研究では,現代英語を代表する1億語のBritish National Corpus (BNC)を構成する13ESP分野のサブコーパスからそれぞれの専門語彙リストを抽出し,その結果に基づいた教育用語彙表からWeb語彙教材を作成した。発表では,一連の研究過程に併せて,開発した教材を報告する。

③中野秀子

Web教材の効果的ブレンド学習

 

 

 

Web上で運営している”Web-English”のコンテンツとフォーラムを授業の中で効果的に使い基礎文法、日常英語表現、ライティングの学習を行った。また、国立工業大学大学院1年の実践英語では学生は自身の研究関連論文から英語表現を選び、「データベース」に投稿し、オンライン英語表現集を作成後、研究のアブストラクトを書き、”Web-English”のフォーラムに提出した。最終的に5分間の英語プレゼンテーションを行った。これらWeb教材・ツールを効果的に授業に取り込んだブレンド学習の事例を紹介する。

④谷村 

日本人英語学習者による英語朗読音声データベースの構築

 

 

本発表では,日本人英語学習者による英語朗読音声データベースの構築過程について述べる.このデータベースには,中学生・高校生・大学生・英語母語話者による物語文と説明文の朗読音声が収録されている(現在構築中).学習者は更に,日本語でも朗読を行っており,学習歴や文体による比較だけでなく,日・英語における比較なども可能である.これにより,イントネーションなどの学習者の朗読における特徴が捉えられると考える.本発表では,既存のデータベースを概観し,本データベースの意義,作成方法,利用可能性について述べたい.

第3室

  者 発   

要 旨

①前田啓朗

WBTを援用した授業で成功した学習者・成功しなかった学習者

 

 

WBT(Web Based Training)を援用しつつ実践した,大学の教養教育(いわゆる共通教育)の英語の授業において,TOEICスコアを主な学習成果の指標として用い,学習が成功した学習者と成功しなかった学習者という観点から報告する。学習者が持つ多様な学習者要因を考慮に入れて一斉指導と個別学習の連携を図った結果として,どのような学習者要因が学習の成功と不成功を分けたのかという側面,学習者要因に関する変容は見られたのかという側面から分析を行い,その結果を報告する。

②武田淳

CMSを活用した自学自習用教材の作成とその運用

 

 

筆者の勤務校では昨秋、Course Management System (CMS) のひとつであるWebCT (BlackBoard)を全学的に導入した。担当者に特別なプログラミングの知識を要求することなくe-Learningの運用を可能にしてくれるCMSであるが、自学自習用の補助教材として容易に準備可能なクローズテストを試作して学生に供したところ、概ね好評であり指導効果も認められた。CMSの今後の展望も見据えながら、話題のeポートフォリオに対する取り組みや他教科の指導例、運用上の工夫などと併せて実践報告する。

③亀山太一

品詞理解と構文力養成を促す英語学習用Web教材

英語による理解および表現を正しく行うためには、文法的な知識が必要不可欠であり、この文法理解の鍵となるのが品詞の理解である。そこで発表者は、英語構文を学習するためのオンライン教材に、そこで使われる英文の各語の品詞を答えさせる課題を加え、品詞の概念を把握し、構文をより理解しやすくするための教材を開発した。

④久島智津子・西堀ゆり

ALTの教師教育における一考察-オンライン・フォーラムを活用したALTの職務準備支援システム-

 

本研究は,ALT予定者の職務準備支援を目的としたオンライン・フォーラム形態の学習コミュニティの構築を提案するものである。JETプログラム開始以来,効果的なティーム・ティーチングの授業案が報告されているが,その一方でALTの質の低下やJTEとの教育観の違いによる摩擦等の問題が指摘されている。本フォーラムにはALT予定者,JTEALT経験者が参画し,ALT予定者はコミュニティ内の相互作用を通じて日本の教員社会の文化・状況を把握できる。本研究は,ALT予定者の職務へのレディネスの醸成に大きな役割を果たすと考えられる。

第4室

  者 発   

要 旨

①山西敏博

英検取得級と大学入試センター試験英語科目の点数との相関関係

 

本論の目的は中高一貫校が他の3年制の学校とどのように異なった形でセンター試験「英語」科目に対する対策を講じているか、とりわけ通常の学校生活の中で取得するよう一般に奨励されている「実用英語技能検定試験(略称:英検)」にて一定の級を取得した生徒が、その後の大学進学に向けて受験するセンター試験「英語」科目においてどのような点数を獲得しているかについて調査していくものである。

②高田敦子

リーディングとライティングとの統合-プロセス・ライティングの手法を用いて-

 

本研究では、高3のリーディング・クラスで、プロセス・ライティングの手法を用いて、感想を自由に表現するライティング活動を行なった。事前テストの得点で、上下3グループに分け、作文の質量の変化を検証、考察した。その結果、全グループで作文量が増加し、下位グループでは、内容、構成、語彙、文法に顕著な効果が見られた。アンケートの結果、多くの生徒がリーティングとライティングとの統合に好意的であった。作文の書き直しに際しては、クラスメートからのフィードバックを上手く活用する訓練が必要であることが判明した。

③栗栖 

英語ディスカッション能力評価のための評価項目の妥当性検証

 

 

本研究では、英語ディスカッション(学習者同士のインタラクション)を用いて高校生英語学習者のスピーキング能力を測定する際、どのような評価基準/項目が効果的か、について、既存の評価基準/項目を用いた実験・検証を通して明らかにする。評価基準/項目の違いによって、評価者が学習者に与えるスコアにどのような傾向の違いが見られたか、について検証し、基準/項目によって重視されるべき学習者の能力の一側面が正当に評価されているか、テストの目的に沿って評価されているか、を明らかにする。

④坂本南美

『語り』を通した教師の成長に関する研究~プロジェクトベイストに行った授業実践を通して~

 

発表者は、中学校でのプロジェクトベイスの授業実践を日本人教師とティームティーチングで行った。本発表では、担当教師同士の授業についての『語り』を質的に分析し、1つの授業に関わる二人の異なった立場や信念を浮き彫りにする。また、教師、あるいは研究者としての視点を交差させながら、発表者自身のジャーナルを分析し、教室内で起こった出来事や生徒の学習に対する意識の変化をとらえる。そして、それが教師の成長とどのように関係づけられるかをあきらかにする。

第5室

  者 発   

要 旨

①高橋俊章

教育文法的観点による日本人学習者への冠詞指導

 

 

日本人高校生を対象とし、教育文法的観点から冠詞指導をした効果について報告する。教育文法的観点から、(1)冠詞規則の提示方法の違い(新・旧)、(2)教授順序の違い(定冠詞の指導→可算・不可算の区別、可算・不可算の区別→定冠詞の指導)を要因とし、実験群と統制群に分けて比較調査を行った。(1)に関しては、定冠詞の指導を「唯一性」に焦点を当てた場合を新、そうでない場合旧と定義している。また、可算・不可算の区別に関しては、二重名詞を対照的に提示した場合を新、そうでない場合を旧と定義している。

②西原美幸・伊東治己

中学生による文型理解と学習方略についての調査研究-日本人中学生にふさわしい文法指導の確立を目指して-

 

 

英語学習入門期において,言葉の仕組みを理解させるには,従来の文法を全面的に押し出した指導方法よりも,極力学習負担が軽く,かつ実際の言語使用に近い形が適切であると考える。そこで,中学生に言葉の仕組みを理解させる糸口として,文型指導が効果的ではないだろうか。そのためにまず,学習者の知的発達を考慮に入れ,英語の規則性理解を促進する文型の有効性について整理する。次に,公立中学校1・2年生で行った基本文型の定着度調査の結果を分析する。最後に,その分析結果をもとに,中学生の認知能力を生かし,学習の進行に応じて発展する文型指導,つまり,文型の構成単位をチャンクと考え,チャンクの拡大と多様化に基づいた文型指導について提案する。

③角山照彦

映画を活用した言語機能別コミュニケーション指導の実践

 

 

映画の活用が学生の動機付けに効果的であることはよく知られているが、映画を活用したコミュニケーション指導用の教科書はまだ非常に限られており、映画の使用は未だ投げ込み教材的な活用に留まっている場合が多い。

 本発表では、1本の映画に含まれる10程度の場面をメイン教材として、ストーリーの流れに沿って扱いながら、同時にオーラル系の授業で活用できる言語機能別シラバスに対応した英語コミュニケーションの授業実践について、教材の作成方法や学生の反応と共に紹介したい。

④大塚賢一

リスニングテストにおける英文放送回数の妥当性検証

 

公立高校入試の一部として行われている英語リスニングテストでは、英文が2回放送されるのが普通である。しかし、英文の繰返し数に明確な根拠があるとは言い難い。本研究では、等質の3グループに「繰返しなし」「繰返し2回」「繰返し3回」のテストを施し、スコアを古典的テスト理論とラッシュモデルを組み合わせて分析することにより、英文の繰返し数の妥当性検証を行った。更に被験者を上位群・中位群・下位群に分けた際のスコア比較も行った。

第6室(13号教室)

  者 発   

要 旨

①高橋昌由

生徒と教師が支持する宿題功課成功の秘訣

 

 

本研究は、英語授業でいかに宿題を功課すべきかを考究する質的研究であり、宿題功課に資する秘訣を提示するのがその目的である。筆者のこれまでの宿題功課の研究成果に基づき、あらたに教師に対して行った面接法調査にもとづき、教師と生徒に支持される宿題功課の12の要素を特定した。その上で、この12の要素を分類して、宿題功課の秘訣に発展させた。教育現場での活用が望まれる。

②久山慎也

学習者の言語熟達度とライティング不安がピアフィードバック活動に及ぼす影響

 

自由英作文指導において,生徒の書く文章をどのように扱いその完成度を高めるかは,指導上の重要な課題である。本研究ではそうした指導法一つとしてのPF(Peer Feedback)活動について,その有効性を高めるために指導者はどのような点に留意すべきなのか,高校2年生1クラスを対象としてデータを収集し検討する。調査に際しては,生徒の言語熟達度とライティング不安(Writing Apprehension)が,PF活動の有効性に対する彼らの認識にどのような影響を及ぼすのかが分析された。

③藤原麻記

大学生による英語劇に見られる役者間のコミュニケーションについて

 

 

佐野(1977)はドラマ活動を通じて英語を学習する最大の効果の一つとして、英語をコミュニケーションの一手段として考える態度が無意識のうちに形成され、伝えるべき内容を何とかして伝達しようとする自主的・積極的な態度が育成されることを挙げている。そこで、授業の一活動として大学生にドラマ活動を行い、最後の時間にはクラスメートの前で英語劇を演じさせた。その録画映像を基に、舞台上で行われているコミュニケーションが実際どのようなものなのかを質的に分析し、明らかにすることを本研究では目的としている。

④吉田勝雄

自己表現を取り入れたOutput活動が現在完了の習得と学習意欲に与える影響

 

本研究は、grammaringLarsen-Freeman 2003)の概念を基にした3種類(①Form+Meaning、②Form+meaning+use、③form+meaning+use+自己表現)の言語活動を、比較分析したものである。中学3年生に現在完了を用いた言語活動指導を行い,生徒にアンケートとインタビューを実施した。事前・事後テストの結果をアンケート・インタビュー結果と共に分析し考察を加える。また、中学校教師に行なったアンケート調査を基に、中学校での自己表現活動の実態を分析する。

第7室

  者 発   

要 旨

①松村敏以

「生活語彙」指導の視点から見た中学校英語教科書の経年変化

 

 

「生活語彙」を学習・指導することの意義については、従前より、研究者、実践家、そして学習者自身、何れの立場からも、繰り返し指摘されてきたことである。しかしその改善方法については、あまり具体化されることもなく、教室現場では軽視される傾向さえ認められた。学習指導要領が改訂され、教科書が変わっても、中学校英語教科書に登場する語彙自体に質的・量的な変化は乏しく、本研究では、3回の教科書改訂に遡り、語彙の分析を試みたが、その結果、改めて「生活語彙」を学習・指導することの意義について強く主張することにした。

②田中洋也

学習者の使用語彙に影響を与える語彙学習ストラテジー

 

 

これまでの先行研究で用いられた語彙学習ストラテジー質問紙をもとに、高校生と大学生英語学習者を対象に新たな質問紙を作成し、英作文における使用語彙との関係を調査した。探索的因子分析の結果、日本人高校生を対象とした研究で論じられてきた語彙学習ストラテジーと異なる4因子が抽出された。発表では、語彙学習ストラテジー4因子と高校3年生を対象に20分間で行われた英作文中における使用語彙との関係を分析した結果について報告する。また、学習者の使用語彙に貢献する語彙学習ストラテジーについて論じたい。

③福地美奈子

語彙の記憶保持に効果的な授業とは?

 

 

発表者は、語彙サイズが3000語以下のEFL学習者にとって、語彙の記憶保持にはどのような授業が効果的であるかを、2つの先行研究に基づき調査した。1つは、文脈学習と語彙の意味を推測させる活動を組み合わせた方法(川村2003)で、もう1つは、文脈からの推測による学習とrote rehearsalL2単語とその訳語の反復練習)を組み合わせた方法(小橋2003)である。その結果について報告する。

④鈴木 

Languagingを通した第二言語ラィティングの正確さの向上:日本人大学生の英語学習者による実証的研究

学習科学では、学習者自身が、知識を能動的に構築すること、認知過程を的確に監視すること、これらが効果的な学習には必要であると仮定されている。そのような学習プロセスを促進する一つの方法として、学習材料を学習者自身に説明させるということが考えられている。本研究では、この方法をlanguaging (Swain, 2006) と操作的に定義する。本研究の目的は、日本人大学生の英語学習者にラィティングのフィードバックをどのように理解・学習するかを説明させることが、ラィティングの言語的正確さの向上につながるかを、実証的に検証する。

第8室

  者 発   

要 旨

①中川 

語彙学習における未知語推測の成否が記憶に及ぼす影響について

 

 

語彙の偶発的学習に最も重要な役割を果たすのは、未知語の意味を推測する学習方略であると言われている。その未知語推測による偶発的語彙学習は、未知語の意味を推測できることが語彙の学習となり、その学習された語彙が記憶にとどめられてはじめてその効果が認められるものと考えられる。そこで本研究では、未知語の意味推測方略の成否に注目し、高校1年生69名を対象に、未知語の意味が推測できた場合とできなかった場合、それぞれの場合と記憶との関係を調査し、その結果を被験者の英語熟達度別に考察する。

②内田富男・後上雅士・投野由紀夫

高校生の自由英作文テストのパフォーマンス-学習者コーパスを使ったエラー分析を中心にして-

本発表は、『マルチメディアを活用した内容中心教授法による高校英語学習プログラムの開発』(渋谷教育学園幕張高等学校 平成1416年度 SELHi指定)におけるライティングに関する実践研究を発展させたものである。

本研究では、GTEC for Studentsの作文テストの答案(高校1、2年生約400名分)とその添削データを電子化した。本発表では、まず、英語運用能力毎の作文の特徴を得点、使用語彙の特徴等の観点から分析し、次に、添削データをもとに被験者の英作文の表層エラーについて検証する。

③鬼田崇作

読解タスクと作文タスクによる関わり度仮説の検証

 

 

 

本研究の目的は,日本人英語学習者の大学生を被験者として,付随的語彙学習研究における関わり度仮説(Laufer & Hulstijn, 2001)を検証することである。関わり度仮説に従えば語彙学習にとって重要なのはタスクの種類ではなく,学習者と未知語との関わりの程度である。一方,未知語の保持をより高めるため,読解以外に作文等のタスクを用いての研究が近年なされている(e.g. Laufer, 2003)。そこで本研究では読解と作文という異なるタスクを用いて,仮説の主張する関わり度の検証を行った。

④姉﨑達夫

母語の書記体系が訳語認識の発達に及ぼす効果

 

 

本実験の目的は、訳語認識において日本人中学生が形態処理や意味処理をどの程度速く行っているか、また発達的な変化はあるのかを調べることである。中学生を被験者にして、日本語を見て英語の訳語を認識する時間と英語を見て日本語の訳語を認識する時間を計測する。漢字から意味に直接アクセスしているかにも着目し、日本語の提示にひらがなど漢字を用いて比較する。刺激項目、訳語方向、経験の3つを要因とする分散分析を用いて分析し、その結果について考察を行う。

第9室

  者 発   

要 旨

①田上優子

英語中上級者にみられる学習ビリーフと学習不安に関する一考察

 

 

 

今日多くの大学でキャリア支援の名目の下、TOEICが導入され対策講座や授業を展開しているところも散見される。しかしながらTOEICスコアによるクラス分けや技能訓練を重視しすぎることで、試験そのものが目的化し、「学び」の楽しさや多様性にふれる機会を学生から奪ってしまっているようにも思える。

本発表では4年制大学の2年生(中上級レベル)へ入学後1年間の自学習の問題点や悩みを自由記述してもらうアンケートと学習ビリーフについてのアンケートを実施したデータを検証、自学習におけるストラテジー指導の可能性をさぐる。

②本田勝久

日本人英語学習のコミュニケーション方略使用における交差的研究

 

 

 

コミュニケーション方略(communication strategies, CSs)が意識的あるいは潜在意識的に使用されるかという問題は、CSsの定義やその分類とともに、これまでCSs研究の重要な概念として議論されてきた。このような意識の問題は、学習者のCSs産出の結果を対象とするプロダクト指向の研究だけでは解明することができず、CSs産出に至る過程を対象とするプロセス指向の研究が不可欠となる。本発表では、学習者の特徴と産出結果との関係を探るような伝統的なCSs研究と、学習者の発達段階のような過程に焦点を置くCSs研究との交差的デザインに基づいた調査結果を報告する。

③中川知佳子

手がかりの種類が目標語の再生に及ぼす影響:単語間のリンク強度に焦点を当てて

 

本研究は、単語間のリンク強度が再生にどのような影響を及ぼすかを、手がかりつき再生課題を用いて検証している。実験1において語彙知識の有無によるネットワーク (パラディグマティック、シンタグマティック、音韻) の違いを反応時間の比較を通し検証した結果、既知語は3種類のネットワークが同様に発達しているのに対し、未知語はパラディグマティック関連のリンク強度が弱いことが示された。実験2では、上記の3種類の語を手がかりとした再生課題を用い、提示される手がかりの種類が目標語の再生に及ぼす影響を検証している。

④森本由子

多肢選択式語彙テストにおける錯乱肢の引き付けやすさと熟達度との関係

 

 

本研究の目的は、文脈内多肢選択式語彙テストにおいて、選ばれやすい錯乱肢が熟達度によって異なるかを調べることである。質問を理解した程度によって選ばれやすい錯乱肢が異なると言われているが (Green, Crone, & Folk, 1989)、語彙テストにおいてこれは未解明の分野である。従って、本研究では目標語とパラディグマティックな関係の語、文脈内の語とシンタグマティックな関係の語、そして目標語と無関連な語を1語ずつ錯乱肢として用意し、熟達度によって錯乱肢の引き付けやすさが変化するのかを検証する。

10

  者 発   

要 旨

①島田沙絵

読解テストにおける図が項目困難度と弁別力に及ぼす影響

 

 

読解における挿絵は、熟達度の低い学習者の理解を促進する一方、誤った解釈を誘発するといわれており、また、視覚的に読み取れるグラフは、表より認知的負荷をかけずに要点を把握できると考えられる。しかし、以上のような図が読解テストに及ぼす影響は調査されていない。従って本研究では、読解テストにおいて、挿絵の種類や表とグラフの違いが項目困難度と弁別力に与える影響を検証した。その結果、いずれも有意な差は無かったが、一部の挿絵は受験者の正答率に、わずかながら正の影響を与えていることがわかった。

②渕上啓子

効果的なリスニング指導法を求めて:音声認識から聴解力の向上を目指して

 

音声認識指導の面から聴解力の向上を図る方法として,音読,シャドーイング(SH)に加え,パラレルリーディング(PR)の効果が着目されている。しかしながら,PRと音読・SHの効果を比較した研究は殆どない。本研究はPRとペアリーディングを組み合わせた指導(実験群)を取り上げ,「音読」指導(統制群)と効果を比較する。大学生に週13ヶ月間の指導を行い,ディクテーション,TOEICスコアの伸びで両群の指導効果を検証する。併せて,被験者の学習記録,アンケート結果も参考にして,リスニング指導法への教育的示唆を考える。

③森山美雪

高等学校における留学プログラムの意義:学習者の英語力と意識の変化

 

K高等学校における留学プログラムの実践報告を行う。研究の目的は、(1)留学プログラムのカリキュラム(異文化理解教育―留学―国際理解教育、英語教育)を提示すること、(2)3年間の生徒の英語力の変化をTOEIC、英検などの結果により分析すること、(3)3年間の国際適応力の変化を、ICAPS(国際適応力診断テスト)の結果により分析すること、()生徒の英語学習の意義の変化を観察やエッセイなどから分析することである。高等学校で留学プログラムを実践する意味と問題点、日本人英語教師の役割について考察する。

④マーク・テーラー

Team Teaching and Postmethod Pedagogy

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The year 2007 marks the twentieth year of the Japan Exchange and Teaching (JET) program in which a young person from abroad is brought into the English classroom as an assistant language teacher (ALT) to work in collaboration with his or her Japanese counterpart, the Japanese teacher of English (JTE). The team's work is situated in the context of policy at the national level with the entrance exam system and the communicative syllabus representing an often contentious discourse devolved to the local level where teachers position themselves and participate, critically or not. The two teachers do establish a working relationship of some sort in accordance with personal sensitivities. Data sources for the present study include a questionnaire, project feedback and interviews with ALTs and JTEs. The diversity of the two teachers' orientations to one another and their work are analyzed and represented utilizing grounded theory approach. Provisional findings suggest that the complexity of team teaching lies in the interplay of cultural knowledge frozen in institutional policy, and in theoretical knowledge picked up informally, interpreted and incorporated, or not, in teachers' idiosyncratic practices as they work together in the setting of school and classroom. Implications for a Postmethod pedagogy are explored.

11

  者 発   

要 旨

①杉森直樹

Lexical Frequency Profileを用いた英文エッセイにおける使用語彙の分析について

本研究発表は、日本人英語学習者のエッセイライティングにおける使用語彙の分析をLexical Frequency Profile(LFP)により行ったものである。重要語彙の使用割合を分析するLFPは、ライティングにおける発表語彙の豊富さを判断する有効な指標であるとされている。そこで、本研究では大学生を対象として、学習者の英語力の差がエッセイライティングにおける使用語彙の差にどのように現れているかをLFPを中心とした計量的語彙分析により検証するものである。

②井ノ森高詩

事前指導で高校生ライティングの文法エラーは減少するのか

 

高校生のライティング指導で毎年同じ類の文法エラーに出くわす。高知大会ではエラーの種類別頻度と生徒自身による訂正度を報告した。大分大会ではエラーを未然に予防する指導にどの程度効果があるのかを、高校3年生対象の実践から報告する。調査の対象として①単数複数の誤り、②断片(Fragment)の使用、の2点を中心として、異なる指導法を取った2つの集団についての比較から見えてくるものを報告したい。

③長橋雅俊

エッセイ・ライティングにおける発達途上の学習者に適合したトピック選びへの一考察

 

トピックとは、作文活動で内容や構成を方向づける要素であり、特に評価ではその影響を無視できない。それは学生の誰もが関心にあると同時に、性別や専門分野に左右されることなく、公平に言語能力を発揮できるものを選ぶべきである。しかし、一般の日本人EFL学習者は、発達途上における発表語彙サイズが限られており、個々のトピックの背景に関連する語彙習得の如何によって補充資料の準備や、時には学習者の語彙発達を待つ必要がある。本発表では、この課題にコーパス利用からアプローチし、方法のひとつとして提案を試みたい。

④馬場千秋

日本人英語学習者のライティング力と文法力の関係-能力測定の実施可能性を考慮して

 

学習者にライティング指導をする場合、文法上のエラーに対してフィードバックを与えることがある。しかし、学習者の文法力に見合った指導をしなければ、学習者はフィードバック内容を理解できず、よりよい英文を書くことはできない。本研究では、学習者のライティング課題に表出されることが多い文法項目(時制・態・語順)に着目し、その項目がどの程度習得されているのか、2種類のテストを行った。その結果とライティング課題を用いて、ライティング力と文法力の関係を考察する。また、テストの問題数、出題する項目も検討する。

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  者 発   

要 旨

①石川慎一郎・石川有香

L2 Proficiency and Word Perception: An fMRI-based Study

 

 

 

 

 

 

 

 

 

How do people perceive L2 vocabulary? How is the proficiency related to the word perception? In the current study, expanding the pilot experiment (Ishikawa & Ishikawa, 2007), we examined approximately 30 Japanese learners of English at various proficiency levels with fMRI, which enables us to see the smallest metabolic changes occurring in the brain and to identify exactly which part of the brain is working when doing various tasks (Huettel, Song, & McCarthy, 2004).Subjects took a vocabulary perception test in the 3-Tesla MRI. Firstly, they had a semantic perception experiment. After listening to the pair words, they were asked to judge whether they were antonyms (as in "king" and "queen") or not. Then, they had a phonological perception experiment. They were asked to judge whether the words they listened to were rhymed (as in "pick" and "kick") or not. Our experiments revealed that the brain part activated when processing the semantic stimulus and that activated when processing the phonological stimulus are different for lower level subjects, but rather identical for upper level subjects. Our findings would cast a new light on the vocabulary teaching in Japan.

②井長 

高校生の英語リスニングにおけるつまずきに関する研究-総合聴解力の構成要素に焦点をあてて-

本研究は,高校生の英語リスニングにおけるつまずきを,リスニング能力の構成要素の観点から調査・分析し,つまずきの克服をめざしたリスニング指導への示唆を得ることを目的としたものである。具体的には,①先行研究をもとにリスニング能力の重要な構成要素としてどのようなものがあるかを検討し,②それらの構成要素が高校生の英語リスニングにどの程度影響しているのか,また③リスニングができない生徒はそれらの構成要素のどこでつまずいているのかを,高校1年生を対象に調査・分析を行った。

③鈴木隆一

高校生の英語聴解度におけるポーズ効果の実証的研究

 

 

高校生の英語聴解度に関して先行研究から人工ポーズを挿入することが聴解度向上に有効であることが実証されている。しかし聴解度に対するテキスト要因との関係を捉えた上でのポーズ効果に関してはまだ明確な意見はなされていない。さらに,人工ポーズの挿入箇所に関してもテキスト要因との関連性が明確に指摘されていない。そこで、ポーズ挿入箇所を変えながら、ポーズ秒数を先行研究から考えられる最大公約数的な1000msとし、それぞれの諸要因との関係からリスニングにおける最も効果的なポーズ挿入効果ついて報告する。

④犬塚博彦

リスニング実験から明らかになった英語音声の聴解のしくみ

 

 

本発表は,大学生を対象として,テープに録音された英語の音声を,①学生たちに聴かせてその場で書き取ってもらう「ディクテーション」と,②みずからじっくりと何度も聴き直す時間を与えたうえでそれを文字に書き起こす「テープおこし」のあわせて2種類の課題に取り組んでもらい,その提出された資料の分析を通して,日本語を母語とする英語学習者による英語音声の聴解プロセス,およびその背後にあって聴解の成否に大きく関わってくると思われる諸要因について考察を加えたものである。

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  者 発   

要 旨

①宮内信治

英語多読導入と学習者の意識の変化

 

 

 

本研究では、英語多読導入による学習者の意識の変化を検証する。独自に作成した質問紙により、英語学習に対する好き嫌いの感情と得意苦手意識について、英語多読導入前後の意識の変化を4年間調べた。また、英語授業の満足度と、学習に対する肯定的意識への変化要因もたずねた。結果として、英語多読は学習者に概ね良好に受け入れられている傾向が明らかになった。学習者からも、学習方法の新鮮さだけでなく、自律的に教材を選択し取り組める点などが好意的に述べられており、英語多読が学習者のやる気を向上させる可能性が示唆された。

②今村一博

高校生に対する多読指導の効果-実証的研究-

 

 

 

外国の多読指導の様々な実証的研究の結果が多数報告されているのに対して、日本では多読に対する実証的研究はまだ少ない。日本の高校生を対象にした多読研究も十分にはなく、多読指導は高校でも普及しているとは言えない。そこで、本研究では8ヶ月半の間、高校生に対して課外での多読指導を行い、多読指導前と後に、精読、速読、語彙(英語の単語の意味を日本語の単語の選択肢から選ぶもの、及び日本語の単語を英語の単語に直してスペリングを書くものの2種類)、文法、リスニングのテストを行った。統計的処理を行い、多読指導の効果を実証的に示したい。

③水野邦太郎

知識としての英語コミュニケーション能力と検定教科書における概念・機能表現の提示の質と量の問題

英語コミュニケーション能力は,英語を実践的に使用する「行為(タスク処理)」の平面と,行為を可能にする「知識(言語リソース)」の平面の相互作用として規定することができる(田中,2006).そこで,本発表では知識面,特に概念・機能表現に焦点を当て,中学・高校の検定教科書(New Horizon 1-3』『Pro-VisionⅠ・Ⅱ』)が概念・機能表現力を養うためにどのような言語リソースを用いているかを分析する.そして,中学・高校の各発達段階における概念・機能表現の提示の質と量の問題について考察する.

④石崎貴士・中西達也

映像教材における日本語字幕と学習者のストループ効果との関係について

日本人学習者に対して,英語音声を伴う映像教材に日本語字幕を付けて呈示した場合と付けずに呈示した場合とで,英語音声の聴解度にどのような差が見られるかについて,本研究では,日本語及び英語によるストループ効果という学習者要因の観点から日本人大学生を対象に実験を行い検証する。

 

14

  者 発   

要 旨

①富田恭代

Effects of instruction on different features of L2 grammar: A meta-analysis

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The relationship between L2 instruction and L2 learning has been extensively studied in the field of second language acquisition (SLA), and a positive impact of instruction on L2 development has been observed.  However, there still remains the question as to whether type of instruction contributes to the acquisition of different linguistic features in similar or different ways.  This presentation reports on research that examined the effects of explicit and implicit instruction on the acquisition of ‘complex’ and ‘simple’ linguistic features by conducting a meta-analysis.  The complexity of linguistic features was determined by the number of criteria applied to arrive at the target form, based on Hulstijn and deGraaf (1994) and Celce-Murcia and Larsen-Freeman (1999).  Three research questions were: (1) What type of instruction is effective for the acquisition of complex grammar? (2) What type of instruction is effective for the acquisition of simple grammar? (3) How do experimental contexts, length of treatment, and outcome measures affect the degree of instructional effect on the acquisition of complex and simple grammar in the short and long term?  Forty-one study samples met the criteria for the meta-analysis.  The results are discussed with reference to the instructed SLA literature, and pedagogical implications are discussed.

②平井 

中国語母語英語学習者の後置修飾構造の難易度-オンライン実験による読解時間の分析-

本研究では分詞修飾、関係節および接触節の3つの後置修飾構造を取り上げ、中国語を母語とする英語学習者での難易度を調査した。日本人英語学習者では、目的格関係節や接触節の理解が難しい傾向があったが、中国語母語英語学習者では分詞タイプの後置修飾が最も難しいと考えられた。文理解において、母語の統語構造が難易度に影響を与えることが示唆される。さらに、オンライン実験での読解時間の分析から、中国語を母語とする学習者の文理解を調査する。

③石原知英

訳すときに何を考えているか-学習者の回顧報告による翻訳過程の記述と分析-

 

本研究は、学習者が英文和訳タスク遂行中に何を考えているのか、その言語処理過程を記述し、その方略を分類、カテゴリ化することを目的とした。そうすることで、英語教育における和訳の利点や欠点についてより具体的に論じられると考えたためである。調査では、学習者の回顧報告を分析対象とし、KJ法を参考にデータを整理した。その結果、1)文学の読み、2)理解、3)翻訳、4)読みのメタ思考、5)訳のメタ思考、6)翻訳の葛藤、7)理解と訳の相互作用、8)検索、9)その他、という9つのカテゴリを生成した。

④横山知幸

英文和訳において原文の長さが原文と訳文の語順の一致度におよぼす影響:ウイルソン第一リーダーの独案内の分析

英文和訳における中心的な問題のひとつは、原文と訳文の語順の違いである。特に、後ろから訳し上げるやり方が、学習や理解を阻害するものとして批判される。しかし、実際に原文と訳文の語順がどの程度一致するのかを調べた研究はほとんどない。本発表は、語順研究に好都合な明治期の独案内という自習書を資料とし、順位相関係数を使ってこの問題を分析している。そして、原文の語順が十数語までは、さまざまな順位相関係数が見られるが、十数語より長い文では、強い正の相関を示すことの多い分布となることなどを明らかにする。

15

  者 発   

要 旨

①大和隆介

How do contexts and inference affect the retention of new words?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

This paper examines the vocabulary learning process by high school students through two experiments. In the first experiment, the performances of four groups were compared to clarify an effective way of learning new words. Group A memorized new words using a word-list; Group B did so using the word-list plus vocalization; Group C using context of short sentences; Group D using the context plus vocalization. Analysis conducted on the post-test scores suggested that those groups that memorized new words in context outperformed the ones that used a word-list. Following these results, the second experiment was conducted to probe an effective way for longer retention by comparing three groups. In this experiment, although all the three groups memorized new words in context, their treatments differed in the following way: Group A, after choosing a right answer from multiple choices, memorized the correct meaning. Group B, given no multiple choices, made an inference on the meaning on their own. Group C made an inference after doing some syntactic analysis. Data analysis revealed that Group B and C outperformed Group A. These findings would imply that the more mental efforts are involved in memorizing new words, the longer the retention may become.

②坂田直樹

日本人英語学習者の語彙アクセス:ワードファミリーアクセスは利用可能か?

 

言語理解において、単語認知の効率化を図ることは重要である。本研究では、日本人英語学習者が単語認知プロセスにおける語彙アクセスの際に、屈折形(例、happier)あるいは派生形(例、happiness)を含むワードファミリーを単位とする語彙ネットワークを用いているかについて調査した。その結果、中程度レベルの日本人英語学習者は、派生形を単位とするアクセスをしている証拠は見出せなかったものの、屈折形を単位とするアクセスをしている傾向が見られた。このことは、日本人英語学習者の心的辞書が屈折形単位で存在することを示唆している。

③吉村満知子・山本みどり

英単語親密度における外来語

 

 

日本人英語学習者による英単語親密度調査に基づき、親密度評定における外来語の影響、その要因について報告する。この調査では、親密度を「当該語彙に対し、よく見聞きすると感じる度合い」と定義し、約3000語の英単語について、視覚提示と音声提示の2通りの方法で評定が行われた。分析の結果、外来語の占める割合は47.9%であった。また、視覚提示、音声提示とも親密度評定値が高いほど外来語の占める比率は高かったが、両者を比較することによって、外来語の影響が異なることが明らかになった。発表では、音韻的な分析も含め詳しく述べる。

④隈 慶秀

高校における英字新聞活用のこころみ-要約の力をつけるために-

 

 

大学入試長文読解問題のテーマは多岐にわたっている。語学的側面以外に内容に関する背景知識も必要とされる。また一定の量を速く、正確に読むことも要求される。一つの解決策として考えられることは教科書や問題集以外では新聞を読むことではないか。新聞を授業で利用するのはなにも目新しいことではない。NIE(News in Education)の実践は小学校、中学校や総合学習や他教科でもおこなわれている。本研究では英字新聞を利用した、要約や速読に慣れる活動を中心として、高校の英語授業における英字新聞利用の工夫を探ることを目的とする。

16

  者 発   

要 旨

Robert Long・田吹昌俊

The Discourse Markers of Intercultural Dilemmas

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The one area that has not been thoroughly examined both linguistically and pragmatically has been that of intercultural dilemmas. For students abroad, either in home stays or in student exchanges, there are occasion in which they find themselves in problematic situations either with cultural norms or with their fellow students, friends, or teachers. Thus a discourse completion task (DCT) was used which comprised 15 different situations based on three kinds of dilemmas--epistemic dilemmas, obligation dilemmas, and prohibition dilemmas.  The DCTs also had a student rating as to how problematic the situation was for them. Previous research based on a DCT concerning intercultural conflicts revealed that the discourse marker oh was primarily used. Analysis revealed that oh likewise served three functions in these dilemmas: as a means of emphasis, as a time-gainer, and as a preface to 16 speech acts. Discussion will focus on the other discourse markers that these university students used and their functions. Recommendation will focus on how discourse markers help speakers to better express themselves and that textbooks should emphasize them more in various dialogues and role plays. 

②志村昭暢(旭川実業高等学校)

英語授業における教師のL1・L2使用に関する教師と学習者のニーズ分析

本研究の目的は、学習者と教師への選択式質問紙調査を通し、高等学校における教師のL1、L2使用のニーズを考察することである。近年、高等学校において英語だけで、もしくは出来るだけ英語を用いて授業を行うことがひとつの目標する機運があるが、L1である日本語を使用した方が効果的な場面も多く見られる。そこで、学習者と教師がどのような学習場面でL1、もしくはL2を使用した方が英語学習にとって効果的であるかということについて選択式質問紙調査を行った。この結果から教師の効果的なL1、L2使用のあり方を考える。

③山西博之・廣森友人

適切な指導と評価を目指した,愛媛大学共通教育「英語」カリキュラム開発への取り組み

 

愛媛大学英語教育センターでは,学生の英語運用能力を効果的に高めるためのカリキュラム開発に取り組んでいる。本発表は,そのような取り組みのうち,適切な指導と評価を確立することを目指した試みに関するものである。具体的には,(1)外部英語能力試験であるGTECと各教員の授業成績評価の関連を見ることで,教員間の成績評価の差異を低減するための方策を得る,また,(2)愛媛大学の学生の現状を踏まえたCan-Doリストを作成することで,その結果を指導に反映させる,といった試みを報告する。

④大里文人・西岡和子

大学における習熟度別クラス編成の現状と課題に関する一考察-意識調査の全体的分析を中心に-

本論は「習熟度別クラス編成が学生の英語運用能力の養成に及ぼす教育的効果」をテーマとする研究の一環として、全国の各大学での習熟度別クラス編成の実施状況を調査し、実施の実態がどのようなものであるか、科目担当教員は習熟度別クラス編成にどのような教育的利点や問題点があると考えているかなどについて、記述を含む全体的な結果分析と考察による現状把握を意図するものである。分析は、習熟度別編成を実施している131校の国、公、私立大学の回答を対象に行った。

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  者 発   

要 旨

①甲斐あかり

物語文読解における再話の効果:学習者の熟達度と産出情報の重要性に焦点をあてて

 

再話とは文章を読んだ後にその内容を人に語ることによって理解の促進を図る言語活動である。本研究では日本人英語学習者を対象に、「熟達度による再話の効果の違い」と「再話時に産出される情報の重要性」の2つに焦点を当てて再話の効果を検証した。分析の結果、(1) 上位群では再話が物語の内容理解を促進するが、下位群では物語によって再話の効果が異なること、(2) 再話で産出される情報が物語文の重要性を反映すること、(3) 読みの回数によって再話時の産出情報が変化することが明らかになった。

②吉田真美

Elaboration or intention? - The effects of reading task, text type, and foreknowledge of a post recall task on L2 reading

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The purpose of this study is to investigate interactions between while-reading task, text type, and foreknowledge of post recall task in second language reading. Japanese university EFL students (N = 103) read a narrative passage and an expository passage while engaging in one of the following three tasks (outlining, embedded questions, and reading only), and recalled immediately after reading and one week later. When they read the first passage, they are not informed of the upcoming recall task, while they have foreknowledge about the post recall task by the time they have read the second passage. A significant interaction between the foreknowledge condition and text type on immediate recalls suggests that foreknowledge about the post task facilitated participants’ recall performance of the expository text. A significant interaction between the task and order effects on the delayed recall suggests that the read-only condition is the most advantageous for recalling the expository text when participants have foreknowledge of upcoming recall task, while the outlining activity is effective when they are not informed of the post task. These results may suggest that when forewarned about the existence of subsequent tasks, the effects of ongoing task can be intervened by the situational goals.

③清水 

読解における推論生成に下位レベル処理が及ぼす影響:橋渡し推論と予期的推論に焦点をあてて

 

読解において推論は読み手の理解に重要な役割を果たしている。しかし、L2においては読み手の推論生成は言語熟達度によって影響を受けることが指摘されている (吉田, 1998)。本研究では、筆記プロトコルを用いて、読解中の低頻度語の意味提示が日本人英語学習者の推論生成に及ぼす影響を、主に橋渡し推論と予期的推論に焦点を当て量的、質的に検証した。その結果、熟達度の高い学習者は推論の種類に関わらず多くの推論を生成すること、また低頻度語の意味提示は学習者の推論生成を促進することが示された。

 

④高田智子

L2物語文におけるテクスト表象の形成を妨げる要因

 

 

国際化、情報化に対応できる読解力育成の試みとして、高田(2005)は異文化衝突をテーマとした文学作品の原書講読について報告した。その後、大学1年生を対象に同様の実践を重ねながら、「テクストからの学習」に至る以前に、その前提となる「テクストの学習」が適切に行なわれない事例に少なからず遭遇した。本研究は、(a)それらの事例をZwaan1995)の事象索引化モデルの5つの局面に分類し、(b)適切なテクストベースの形成に至らなかった理由を考察し、(c)指導への示唆を得ようとする試みである。

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  者 発   

要 旨

①富永裕・田邉祐司

英語発音学習者分析

 

 

特に中学生を対象とし、日本での通常教育を受けながらも、見事な英語発音能力を習得した「発音成功者」(Successful Pronunciation Learners: SPL)はどの位存在するのかを調査し、合わせて「なかなか英語の発音が身につかない者」(Poor Pronunciation Learners: PPL)への調査を通し、その学習履歴にethnographicなアプローチから迫り、英語発音指導のための知見を得るものである。

②松吉明子

日本人英語学習者の/r//l/音の識別

 

 

 

日本人英語学習者に顕著に見られる音声上の母語の影響として、/r//l/の混同が挙げられる。本研究はこの二音素の識別に焦点を当て参加者42名によるナンセンスワード聞き分けてストを行い、母語にない音素のカテゴリー形成度を調査した。英語習熟度上級グループの約95%に対し、中級の65%という正答率は識別能力に明らかな差があることを示している。又アンケート調査の結果と先行研究で示された臨界期の影響は、英語学習の早期における/r/,/l/音の識別意識の重要性を示唆するものと考えられる。

③山岡俊比古

日本語拗音(ミャ)を利用した英語/æ/の発音指導の効果-生起環境タイプ頻度とその増強練習効果-

英語を学ぶ日本語母語話者にとって,catcapの発音は難しくないのに,matmapの発音は難しい。これは前者においては日本語拗音のキャが利用されるのに対し、後者においては拗音のミャが利用されないためであるとし、その理由を、ミャが日本語の中で生起する環境が、キャに比べて限定されているためであると考え、ミャの生起環境のタイプ頻度を高めた練習(日本語のミャを起点とし、英単語を利用して展開することによってそのタイプ頻度を高める練習)を考案し、その練習効果を疑似的実験によって検証し、結果を報告する。

④小関 隼・横山吉樹

事前プランニング活動が意味交渉に与える影響

 

 

現在まで、事前プランニング活動が意味交渉に与える影響を考察した研究はほとんどない。本研究では、意味交渉のプロセスを,triggers, signals, responses, reactions to responsesの一連の流れとして捉える。そして,事前プランニング活動の有無によって,意味交渉の回数、その長さ(ターン数)、各段階での発話、またその成功にどのような影響を与えるかを検証する。さらに、Sequential analysisによって,意味交渉が辿るプロセスの特徴も分析する。

19

  者 発   

要 旨

①島豊和

コミュニケーション能力獲得のための自発的・相互的学習

 

 

 

自発的・相互的学習が学習者のコミュニケーション能力養成にもたらす効果について、授業実践報告を通して発表する。実際の授業ではCLT(Communicative Language Teaching)の骨子である「学習者中心」「生徒同士の相互交流」という考え方を元に、数々のタスクを行った。具体的には、「詩の翻訳」「英詩の作成」「自己紹介」「学校紹介」などの活動を行いながら、与えられた教材に受動的に取り組むのではなく、生徒との相互交流を通じ「自らを表現する」学習を中心に授業をすすめた。発表では、実践の成果と問題点、さらにこれからの課題について検証する。

②八田玄二・木村 

ベトナムにおける小学校英語教育の理想と現実-指導要領、教科書、教師、そして授業

 

ベトナムでは英語は選択科目として小学校3年生から教えられてきている。本研究では、国家的戦略として小学校レベルでの英語教育を強力に推進しようとしている政府の施策がどのような形で指導要領や教科書に具現化されているか、また、そこに掲げられた高邁な理念が、開発途上国にありがちな格差とインフラの不備という現実の中でどのように実現されているか、またそこに内在する問題点などを、日本国際開発銀行(JBIC)ならびにJICAによる最新のデータ、教科書の分析、現地での授業観察、教師とのインタビュー調査を通して明らかにする。

③川村亜紀

日本の高等学校における英語スピーキング指導の実態-フィンランドでの実態調査の結果と比較しながら-

本研究では、実践的英語コミュニケーション能力の育成が求められる中、高等学校でのスピーキング指導はどの程度実践されているか、また、高等学校でのスピーキング指導を困難としている問題点は何か、を探ることを主な目的とした。日本(高知県)の高等学校に勤務する英語教師を対象に実施した、英語スピーキング指導に関するアンケート調査の結果を分析し、語学教育の盛んなフィンランドの英語教師を対象に実施した、同様のアンケート調査の結果と比較することで、日本の高等学校における英語スピーキング指導の実態をより明確にすることを試みた。

④松浦伸和

高校生の英語学習意識に関する全国調査-過去50年間の変遷-

 

本発表では、広島大学教育学部英語教育研究室が昨年度実施した高校生の英語学習意識に関する全国調査の結果を報告する(調査協力校27都道府県の37校、有効回答数5,371)。本調査は、同研究室が1966年以降、おおよそ10年間隔で(基本的に同じ質問紙を用いて)実施してきたものであり、このたびで第5回目を数える。当日は今回の調査結果を示すとともに、5回の調査結果の変遷という観点からも考察を加える。

 

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